ラサールロジポート投資法人 2025年2月期決算概要

ラサールロジポート投資法人
2025年2月期(第18期)決算動画説明書&質疑応答
○動画  https://www.irwebcasting.com/20250422/1/4f2e71e09c/mov/main/index.html
○説明資料
https://lasalle-logiport.com/file/term-971e25aafb29a0a9496c0ab9724f1b47c3748f97.pdf
○説明者 ラサールロジポート投資法人 執行役員 兼
     ラサールREITアドバイザーズ株式会社 代表取締役社長 地紙 平
〇説明
本日はご多忙の中、ラサールロジポート投資法人、第18期(2025年2月期)の決算説明会にご参加頂き誠に有難うございます。本投資法人の株価パフォーマンスは、厳しさが継続し、前期の決算発表からの半年間の中でも更なる下落基調が続いています。このような不透明な環境下、株価動向に対する危機感は増しつつも、冷静に現状分析を行い、機動的に経営判断を行っていくことが重要と考えています。本投資法人は、2023年10月以降資本コストの高まりを背景に、資本収益性および資本効率の向上を目指す戦略に方針転換を行い、過去4期にわたって各種施策を継続的に実行してまいりました。足元の環境下では、この戦略の方向性を辛抱強く続けることが企業価値向上に繋がるものと考え、一喜一憂せずに続けてまいりたいと思います。

前回の決算発表で、資本コストや株価を意識した経営に関する総括的な内容を示しました。この経営方針は、資本収益性と市場評価に対する現状分析を常に行い、適切な経営の方向性や計画に沿った取り組みを推進し、資本コストを上回る資本収益性を達成した上で、その差を拡大させることを目指しています。J-REITの特性も考えると簡単ではないですが、この目的に沿った本投資法人の運用戦略の考え方について、現状分析を踏まえてアップデートしています。今回の資料構成は、決算ハイライトの流れではなく、なるべく戦略の構成要素に分けた章立てで作成しています。そのため少し頁繰りが多くなりますがご了承ください。

はじめに第1章で、本投資法人のDPUなど、ファンドパフォーマンスに関する数字を説明します。
4頁にDPUの実績値の過去推移と、2025年2月期の着地を示しています。25年2月期は上場来の最高値である4,005円で着地しました。24年8月期から+379円、約10%の増加です。25年2月期に約80億円の自己株を買い付けましたので、投資口総数が約3%減少し、その効果が110円あります。それ以外には、NOIや間接投資の収益の貢献と、分配方針の変更による一時的利益超過分配の効果が押し上げています。又、物件売却については、25年2月期はロジポート流山B棟の分割売却の第3回目が計上され、こちらも継続的な分配金仕上げに寄与しています。多少の凸凹はありますが、資本コストが高まる環境下において、資本収益性と資本効率の向上を目指した施策を積極的に実行することにより、DPUは3,600円から4,000円の間で継続的に推移しています。これは、直近の純資産額をベースにROE に換算すると7%半ばの水準です。

5頁に今期と来期の業績予想を示しています。25年8月期の予想DPUは、3,829円に上方修正しています。昨年10月公表の業績予想から+146円ですが、主な要因は頁上段の3つで、25年2月期の自己株の買い付けによるもの、ロジポート川越の売却持分10%相当分の前倒し、松戸松飛台案件の開発利益の計上です。そして翌期26年2月期のDPUは、3,474円を予想しています。ロジポート川越の物件売却は、当初20%と80%で2期に亘り分割決済を予定していましたが、それが30%と70%に変更に前倒しとなった分、予想DPUの減少幅は、この2期間の比較では大きくなりました。

又、NOIの減少予想も、物件の売却の前倒しによるものです。ご参考までにこの頁を見ると、物件売却によるNOIの減少傾向を気にされる方もいらっしゃるかと思いますが、物件売却の資金を一部自社株買いの取得に充当し、NOIの減少率とほぼ同じ割合の自社株買いの買い付けが前期末時点で完了しているため、一口当たりで比較すると実はほぼ減少していません。業績予想に未反映の今後の買い付けを考慮すると、一口当たりで見れば、リエイティブな施策が全体として行える見込みです。

この点はどうしてもタイムラグが生じるのと、一連の施策をある程度継続して、初めて成果が見えてくる部分ですので、次回詳細分析してお伝えします。尚、この3,474円には未確定の要因はまだ反映しておりません。例えば、昨日決議した自己株の上限40億円の買い付けや、4月17日に公表しました今後の潜在的な物件売却や出資の取り組みについては、アップサイド要因としてご認識ください。あともう1点、昨日発表しましたロジポート狭山日高の売却および出資については、2026年3月の決済を予定していますので、今回の業績予想の期間には含まれておりません。こちらも継続的な物件売却の取り組みの一環として、26年8月期に計上されるものとしてご認識ください。

6頁に一口当たりNAVの過去実績を載せています。25年2月期は165,294円で着地しました。本投資法人は、継続的に物件売却と自己株の取得を含む投資主還元を実施していますので、保有物件の価値向上に加えてその変動要因があります。25年2月期は、流山B棟の追加売却と、一時的利益超過分配の実施によるマイナス効果が約1100円ありますが、保有物件の含み益の増加と、一口当たりNAVより低い株価での自己株の買い付けの効果により、約2,000円程度押し上げ効果がありました。物件売却や投資主還元により、NAV総額は減少傾向にあるものの、一口当たりNAVは継続的に増加し、過去4年間で見れば年平均で+4.4%成長しています。

7頁に資本効率の向上を計測する指標として、前回の決算で掲げた株主資本総還元率の進捗を示しています。この指標は資本収益性としてのROEに対して、リートの特徴である高い株主還元率の両面を捉えるため、総還元性向を掛け算して計算しています。ROEは、不動産のキャッシュベースの収益を構成する減価償却を差し戻した、FFOに基づいて売却益などを含めて算出し、その総還元性向は、そのFFOに対して還元率を算出しています。25年2月期は、物件売却益の計上と自己株の買い付けが進み、ROEは7.6%以上上昇し、総還元性向は194%に上り、非常に高い数字を達成できました。資本効率の向上は着実に進んでいると言えます。この指標は自己株の買い付けの規模にも左右されるため、単一決算期で計るよりも、複数期間において計測することが適切と考えています。特に、本投資法人の自己株の買い付けは株価次第で上下するため、決算期によって規模が変わります。業績予想の2期も含めた4期平均で見れば、本日時点の公表ベースの内容で8.4%となり、目標の8%を上回りつつ、今後の自己株の買い付け進捗で9.4%まで上昇することが見込まれます。未確定の物件売却が収益構造に上乗せされれば、更なる向上にも繫がります。

続いて第2章では、本投資法人の戦略の考え方の枠組みについて、直近までの株価やバリエーションなどの市場評価に基づいてアップデートしています。
9頁では前回の決算発表で説明した、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けて求められる対応について、現状分析、経営方向性、取り組みの実行の各ステップにおいて、我々なりの対応と方向性について記載しています。この頁は文字が多い総括ですので、10頁以降で順を追って説明します。

10頁は先ず現状分析のアップデートです。2023年の10月以降、先ほどDPUの過去推移でも示しました通り、物件売却益の投資主還元を継続的に実施しているにも拘わらず、本投資法人の株価がなぜ上がらなかったかという点について可視化しています。結論としては、定性的には目新しくはないのですが、足元の株主資本コストが急速に上昇して、投下資本収益率、所謂、ROICの上昇幅を上回っていることが原因として見ています。企業価値向上に向けて意識するべきは、資本コストと資本収益性の差であり、この差は経済的付加価値、所謂、エコノミック・バリュー・アッド・スプレッド(EVA Spread)と言われますが、この考え方を取り入れて、本投資法人のROICと日々の株価から示唆される株主資本コストをEVA Spreadから逆算しました。

左側のグラフから、2023年10月1日に戦略転換してから本投資法人のROICは3%前半から4%まで向上したので、資本コストが仮に一定であれば EVA Spreadは拡大し、株価は比例して上がるはずです。しかし、株価が示唆するEVA Spreadは拡大せず、寧ろ緩やかな縮小傾向にあります。つまり資本コストの上昇幅が同じ期間に上回ったと言えます。右側のグラフが日々の株価とROICから逆算して示唆される、本投資法人の株主資本コストの推移です。日本の長期金利も併記していますが、それなりの連関性があり、金利上昇局面においては、負債コストよりもエクイティの資本コストの上昇が先行していることが改めて確認できます。又、物件売却益が株価にどの程度織り込まれるかという議論も昨今ありますが、右側のグラフを見ると、2023年10月に青い線が急伸していますが、半年にかけて一段落し、その後は過去からの傾きとほぼ同程度のペースで上昇しているということが見て取れます。

つまり半年間かけて売却益の収益性を一定程度織り込み、直近1年ほどは、その売却益を織り込んだエクイティリターンをベースに、金利上昇に連動する形で株主資本コストが上昇している傾向が見られます。尚、株主資本コストの算出方法は、学術的にも、実務的にも複数ありますので、ここで示していますのはあくまで目安としてご認識ください。この現状分析に基づいて、改めて本投資法人の経営の方向性として、戦略の枠組みと実績を、11頁と12頁に纏めています。

11頁は変更がないので、この場では12頁の実績をアップデートして説明します。
今般、ロジポート狭山日高の売却を決定し、物件売却規模は資産規模の約10%に達しました。実現した含み益は67億円、即ち全体の約8%に達します。売却資金の配分として、高収益を目指す間接投資に111億円振り向け、B/Sの右側では株主還元の拡充を着実に行っています。自己株の取得は、過去1年間と今後半年で総額120億円に上り、投資口総数の4.6%の規模を継続的に決議しています。4.6%という割合は上場リートの自己株取得の事例の中でも、2番目に大きい規模です。又、2025年2月期は、4.5億円の特別配当を利益超過分配として実施し、売却益の全額分配と合わせて資本収益性の向上に寄与しています。何故物件売却を行うか、いつまで行うか、何を基準に行うかという質問に対して、本投資法人の場合は、ただ単純に毎期一定の売却益を上乗せすることだけではありません。

13頁に示す通り、足元が不動産の資金化による、投資主価値の向上に資する取り組みであるという考えに基づいています。上場リートが私募リートと最も異なる点がここで、上場している意義として、常に公募市場と私募市場のArbitrageを取り続けるべきという基本的な考えに立ち返っています。資産規模の縮小をもたらしても、中長期的な企業価値向上を目指すという、Going Concern性のある上場企業と共通する命題をリートで行うには、この考え方を取り入れることは非常に重要と思っています。参考値として、上場来の鑑定NOI利回りとインプライドキャップレートの推移を右側のグラフに示していますが、このギャップを活用して、資産規模の拡大と縮小を適切に繰り返すことが存在意義と考えております。

今までの話に基づき、14頁に足元の本投資法人の戦略を、4つの柱に分類して記載していますのでご確認ください。今回の説明会資料はこの戦略の柱に基づいて構成しています。
第3章は、戦略の上位概念的な位置づけである、ポートフォリオ戦略における昨今のポートフォリオマネジメントの取り組みと方向性を示しています。先ず昨日発表しましたロジポート日高狭山について、16頁と17頁に亘って説明します。

16頁をご覧下さい。今回は単純な物件売却ではなく、間接投資への切り替えという点が今までとは異なる特徴です。ロジポート日高狭山をSPCに譲渡し、第一生命と共同保有の匿名組合出資という形態で行い、本投資法人は約13%の出資持分を保有します。取引価格は 70億円で、約7億円の売却益を26年8月期に計上する見込みです。本投資法人の出資金額は3.5億円なので、約60億円の資金を別の投資や還元に振り向けることができます。又、昨今の金利率上昇リスクを考慮し、ノンリコースローンの金利の固定化をすることを検討しています。今後は金利リスクを排除して、安定的な配当を享受できる見込みです。間接投資へ切り替えたもう1つの狙いとして、賃貸借契約年数が長期の物件をB/S外で保有し、本投資法人の直接保有物件をより内部成長が見込めるポートフォリオ体質にするよう、選択と集中を行うことが大きなポイントです。

17頁をご覧下さい。本頁に示す通り、今までの物件売却は夫々狙いがありましたが、狭山日高の場合は、この3番目の点である筋肉質なポートフォリオを目指すということに重点を置いた新たな取り組みです。更に今までバリューアップを図ってきた保有物件を売却し、継続的にその価値を実現することで、投資家から要求リターン高まりを合わせたアクティブ運用の取り組み、言い換えれば本投資法人の事業全体の利益の拡大に資すると考えています。

18頁に示す通り、物件売却取引を狙いが多様化すると同時に、ポートフォリオマネジメントの手法も多様化してまいりました。直接保有と間接保有を組み合わせて、B/Sの内外で運用資産の拡大を行ってまいりましたが、その目的についても3つに多様化しています。狭山日高の事例は、この3つ目の長期の共同投資に該当し、ポートフォリオマネジメントの観点で第三者のコア投資家と長期目線で共同保有するというパターンです。外部成長が難しい足元の環境で、保有形態を多様化することが重要と考えています。下段のグラフに示す通り、B/S外で運用する資産は、ここ数年で急拡大しました。過去から見れば資産規模の拡大期に緑のバーは減少し、逆の場合には拡大とするというサイクルが、実績として積み上がっていることが見て取れます。

本章の最後、19頁にて、改めて直近のB/S内外の資産規模の割合を纏めています。狭山日高は資産規模の1.7%の物件を間接保有に切り替え、B/S外の運用資産の約3%占めるような内容となっています。引き続き直接保有物件は、資産規模全体の95%、間接投資は3%という割合です。間接投資先の運用資産規模は約2,600億円に達し、B/S上は抑制されてエクスポージャーですが、運用資産規模としては、本投資法人の資産規模の7割のポートフォリオを構築しています。

第4章で資本戦略を説明します。2018年以降のアクティブ運用戦略の3本柱にはなかった新しい柱ですが、足元では特に重要な柱と認識しています。
先ず、21頁ページのキャピタルアロケーションのアップデートですが、狭山日高の売却により、この取引総額は375億円になりました。そのうち本日時点までで確定している投資先の合計は106億円、投資目的と位置づけている自己株式は、前期までに買い付けを実施した80億円に加えて、直近足元の株価動向を踏まえて、昨日40億円の新たな買付決議を行い、総額で120億円の配分を決定しています。投資主還元として分配済み、或いは今後 分配予定の売却益は総額67億円、25年2月期の利益超過分配や還元目的の自己株に総額6億円、合計73億円を配分しています。これらを差し引いた76億円が未消化分の資金となり、今後の新規投資、或いは投資主還元に有効活用していきます。

22頁に現状の新規投資のスタンス、或いは投資目的の資金使途の優先順位の考え方を整理しました。13 頁で示しました通り、現在、上場市場と私募市場の利回りに乖離があり、上場市場の方が資本コストの上昇を先行して急速に織り込んでいる際には、投資先としては上場リートの投資口、即ち自己株の取得が最もRisk Adjusted Returnが高いと考えています。そのため現在は、自己株式取得が本投資法人の資金配分の最大の割合を占めています。間接投資は、不動産取引市場の利回りがワイド化しない限り、金利上昇の局面でデットコストガ高まる中では、選別投資が必要と考えています。そのため、中長期的な物件の競争力や イールドスプレッドを精査しています。逆に金利上昇局面で、間接投資のポートフォリオを効果的に分散させる投資先として債権投資を検討しており、南港、八千代の案件に続く第2号のメザニン投資を検討しています。不動産への直接投資は、現時点での本投資法人の資本コストと現物市場のキャップレートに鑑みれば、投資先は限定的と考えています。

23頁は昨年4月から実施してきた自己株の取得について、進捗と効果の検証を示しています。昨年の4月から10月の期間はアナウンスメント効果もあり、NAV倍率0.9倍の株価で下支え効果が一定程度見られましたが、10月以降は相場全体の下落基調の波に押されてその効果は薄れました。一方で買い付けの基準となる価格を下回って株価が推移したことから、NAV倍率0.86倍で加速度的に買い付けが進んだ様子が見て取れます。又、3月末時点の本投資法人のベータは、ブルームバーグのデータで0.41と、全リートで2番目に低いことから、ボラティリティの低下、即ち、間接的には資本コストの低下に貢献しているとも言えます。結果的に、昨年4月に自己株取得を公表した直後には買い付けは進まず、株価が最も低い時期に限定した形で、買い付けを行うことができた点は成功と言えます。しかし、株式市場での取引需給を下支えする、アナウンスメント効果は賞味期限が約半年で、株価への効果は相場の荒波には勝てないということは学びました。それらを踏まえ、投資を目的とした自己株、即ち、株価のダウンサイド局面で買い付けることに集中するべきという判断を致しました。

24頁に 今回の決議内容を纏めています。前回設定したNAV倍率 0.9倍より上の水準で買い付けを行う還元圏は、買い付けが進まなかったため撤廃し、その資金をNAV倍率0.9倍以下で買い付ける投資圏に振り向け、今後半年間で40億円、昨年からの合計で120億円の自己株を取得する予定です。

第5章でポートフォリオの運用状況と内部成長に関してご説明します。
26頁で前期と業績予想の2期における稼働率や、賃貸者契約の改定状況をアップデートしています。ポートフォリオ全体で稼働率および賃料改定において、好調な成果が今回も継続して達成できています。倉庫稼働率はほぼ満室が続き、現時点で内定している改定内容を見ても、平均して7から8%の賃料増額を達成できています。その傾向は、定借の19 物件と東扇島の3物件の両方で見られ、引き続き堅調な内部成長が期待できる内容です。特に東扇島の3物件は、普通借区画の増額交渉において持続的な成果が確認でき、2桁の増額を達成できている区画もあります。今後1年に亘り契更改を迎える区画の、今後の内定率も今期86%、来期46%と順調に交渉が進み、過去平均を上回る内定率を達成しています。

27頁に本投資法人のポートフォリオの中でも特徴的な、東扇島A、B、Cとアップしています。大きな特徴は、契約の残存年数が1.3年と短く、賃料ギャップが2割以上と大きく、テナント数と荷主企業数が細かく分散している点です。本投資法人の約2割をこの3物件が占め、過去3年間の平均賃料増額率は7.8%と、ポートフォリオ全体を上回っています。定借と普通借の割合は半々ですが、普通借区画での賃料増額交渉の結果、2025年約10%の増額で改定に合意できた区画が7 テナント・10万m2あります。又、B棟とC棟において、3年間に亘って段階的に賃料が増額する条件で合意できた事例もあり、物価上昇に負けない運営を心掛けています。

28頁は毎期アップデートしているALMの頁ですが、今年に入ってから金利の急上昇を踏まえ、借換えにおける金利上昇の前提を見直しました。今年2月に行ったリファイナンスでは、金利固定化のスワップコストが5年で125basisと想定を上回ったため、今後、借換えにおいて、+50から80basisの金利上昇を想定した試算結果を記載しています。ただ、足元を再び金利の乱高下が見られ、金利固定化コストも上下が激しく、見通しがより難しい局面になっていますので、慎重に資産と負債の総合管理を行ってまいります。尚、業績予想の前提は、保守的に1ヶ月TIBORが80basis、3ヶ月TIBORが100basisi、借換えのベースレートを150basisで算出しているため、しっかりとバッファを見積もっています。

第6章で間接投資を中心としたバリューアッド戦略について触れます。
30頁は、今年3月にプレスリリースしました、松戸の開発案件の投資開始について振り返っています。本投資法人として2つ目の開発案件で、初めて外部のパートナーと組んで行った開発案件です。足掛け4年で、当初土地と既存建物をSale & Lease backで取得し、リース会社のブリッジを経由して、建物の解体後の2023年8月に着工しました。建築費の高騰の影響を受ける前に条件を確定し、結果的にIRR13%を達成しました。中規模の物件であるため金額は大きくないですが、今期の分配金に開発利益の貢献が期待できます。第1号 案件の大阪住之江物流センターと同様に、サイドカーファンドでテイクアウトしました。
31頁は、金利上昇を踏まえた間接投資のトピックとして、メザニン投資を取り上げています。

本投資法人は、昨年8月に運用ガイドラインの改定を行い、メザニンなど不動産関連 負債性資産への投資を想定した記載を追加しました。実績としては1件、流山B棟の交換 物件として取得した、南港と八千代の物件を裏付け資産とした、SPCが発行した特定社債を保有しています。メザニン投資の最大の意義は、金利上昇局面での収益分散にあると見ています。この案件では、最劣後のエクイティに相当する優先出資49%保有していますが、メザニン部分も同時に投資することで右側のグラフで分析している通り、今後短期金利の上昇が続いた場合、収益の安定化が図れるという効果があります。仮に変動金利で投資すれば、金利上昇は収益貢献を意味しますので、間接投資のポートフォリオ分散にメザニンは効果が高いと考え、今後一つの投資対称として重視していきたいと考えています。

32頁は、足元出資先の進捗をアップデートしています。サイドカー ファンドのLRS3の運用総額は10 物件・約1,400億円になりました。引き続き投資余力は、約300億円有しています。又、昨日ロジポート名古屋の49%持分と、ロジポート川崎ベイの15%持分を保有するSPCへの出資を公表しました。昨年10月に公表したロジポート川越の売却に対して、売却先から交換物件として、川崎ベイの持分15%を取得することに合意しましたが、今般、その取得をSPCで行い、本投資法人が出資することを意思決定しました。又、川崎ベイ単体ではなく、ロジポート名古屋の持分も共同で保有する設計とし、約7%の想定リターンを見込み、37億円の出資を予定しています。ロジポート川越の分割売却に合わせて、2分割での出資を今年の6月末と10月末に予定しています。

バリューアッド戦略の取り組みの最後33頁は、先週公表した三菱地所物流リートとの協働の概要です。準共有持分の形式で共同保有する物件は4つありますが、それらを候補として、今後はお互いに資産の流動化を検討することを合意しました。同じ物件の準共有持分を両投資法人が拠出し、SPCへの譲渡を通じて間接投資に切り替え、お互いの譲渡先に出資するスキームを想定しています。先ほどロジポート狭山日高への間接投資への切り替えについて説明しましたが、このスキームはそれの派生系をイメージしています。B/Sの外で長期の共同投資を行う点は共通していますが、それを同じ物件の持分を保有する別のリートと行うというものです。売却益の計上、上場リート特有の分割売却、安定的、且つ継続的な売却スキーム、高収益投資の機会の確保など、昨今の上場リートの戦略上重要、且つ必要な要素の多くを達成できるスキームとして有望として考え、その中でも共同保有する物件が多い三菱地所物流リートとは、メリットと親和性が大きいと考え、合意に至りました。今後、具体的な物件選定やSPCの組成に向けて協議を開始してまいります。

第7章35頁にて、B/Sの状況をアップデートしています。2月末の時点でLTVは35%、総資産有利子負債比率は43%と、半年前と大きく変わっておらず、又、この水準を維持することを考えています。平均借入年限は7.6年、残存年数は3.8年、固定化比率は90%超を保っています。平均借入金利は、2月のリファイナンスを経て、半年前の0.67%から約9basis上昇しました。財務運営方針を変えておらず、コストとの見合いで、金利の固定化とマチュリティラダーの分散化を維持する年限設定を行ってまいります。
最後に第8章で脱炭素化に向けた取り組みを説明します。

37頁ですが、表現としてはESGというよりも、ネットゼロカーボンに向けた取り組みという方が正確で、本投資法人として優先しているのは、CO2排出削減とNOIの向上を両立できる取り組みです。以前も簡単に触れたことがありますが、ポートフォリオ間で再生可能エネルギー由来の電気を融通するオフサイトPPAが、ロジポート柏湘南とロジポート新守谷の屋根に設置した、太陽光発電設備にて稼働を開始しました。これらの物件は、シングルテナントに1棟貸しをしているため、テナント側で既に電気を調達していることから、屋根の有効活用の方法として、本投資法人の別の物件、具体的には相模原、北柏、東扇島A、B、C棟の5物件に電力を託送して、電気代を削減できる効果が見込めます。ラサールでは、エネルギーヒエラルキーに基づいて優先順位を明確化しつつ、投資主価値の向上に資するネットゼロに向けた施策、所謂、投資パフォーマンス向上のためのサステナビリティという考え方を取り入れています。今後もエネルギー効率の向上に向けた照明のLED 化や、ポートフォリオでの自家消費のための太陽光発電設備の設置を推進してまいります。

決算説明は以上です。ご清聴有難うございました。
<質疑応答>
Q:色々と戦略の説明を頂きましたけれども、一方で内部成長と言いますか、リーシングのところについてもう少しお伺いしたいなと思っております。本業と言いますか、そこが一番重要かなとも思ってはおりますが、現状の物流市場環境、それに応じてリーシング、賃料増額につきましては、今後についてもしっかりと賃料増額、それに伴う一口当たりの収益性の向上というのがこれからも見込めるのかどうかを、もう少し詳しくご説明頂ければと思います。
A:内部成長ポテンシャルについては、引き続き過去実績同等、或いは頑張ればそれ以上というところを目指して、継続的に上げていけるものと自信は持っておりまして、過去3年プラス今期、来期などの業績予想を見ても、安定的に5から10%の範囲内での賃料増額というものは継続的に達成できております。では、今後も継続できるのかということに関しては、資料の後段にも載せておりますが、スポット賃料と現行賃料のレントギャップについても、ここの幅というのはなかなか縮小していないと、つまりはまだここのアップサイドというものは、我々のポートフォリオに関しては十分に存在すると考えています。ご案内の通り、空室率が高止まりしているというマクロ的な物流賃貸市場のデータはありますけれども、それは当然に留意しつつ、我々は ポートフォリオの競争力で勝負すると。その中でも、地図をどこかのページに載せておりますけれども、より高い賃料増額が目指せるような立地にフォーカスして、ポートフォリオ全体をマネージしていくという方向性で、今回狭山日高 もその一連で戦略に基づいて行った取引でございますけども、この筋肉質なポートフォリオを作ることで、内部成長余力を過去以上のものを目指していくというのがベクトルです。

Q:売却資金の使い道としては、自己投資口の取得とか間接投資とかの優先順位を高めていくということですが、お話だけ聞いていますと、今回の狭山日高の件につきましては、売却益を計上しつつ高収益投資機会を確保するというような良い話ばかりなので、極端な話、全部それにしたら良いみたいな、そういう話にもなってしまいますので、逆に、少し間接保有、間接投資に関するデメリット、留意点というところについて考えがあれば、お伺いしたいと思います。
A:間接投資の留意点というところですが、1つあるのはやはり、先ずはレバレッジ です。 ここは当然、間接投資を行うについては SPC を介すると、ノンリコースローンとはいえ、見かけ上のルックスLTVというのは、これを続けていくと上がっていくというのが1つあります。当然、J-REITは連結という概念はありませんが、実体的にそのレバレッジが上がるというところは、当然この間接出資持分が増えていくと、B/Sのレンダーとも協議が必要というところで、我々は今、ポートフォリオの全体の5%を目途に、これを行っていくということを考えていますので、今3%近くまで上がっていきますけど、この範囲内でちゃんと マネージしていくというのが1つです。あともう1つは、先ほども触れましたけれども、金利上昇リスクというのは、当然にレバレッジがかかっていると、それに対してのセンシティビティが高くなるというところはもう自明の通りです。ですので、調達サイドは、ここについてはちゃんとその部分が、金利の上昇を織り込んでアンダーライトするということ、それに加えて取得する物件というものの収益性というのが、ちゃんとそれに十分なスプレッドがあるというところは、今後精査していかなければならないと思っております。現物市場のキャップレートが現在はまだ上がってきておりませんが、長期的に、理論的に金利が上がってきて、ここの買い場というものが訪れるのかどうか、ここが今後の取得のするケースの判断する一つの大きな材料になるので、これをやり続ければいいというところもありますが、実際にこれを案件化することに対しては、慎重にアンダーライトとしていかなければいけないので、ペースはこの局面ではどうしても気をつける必要があると考えています。

Q:28頁の収益構造とALMに関する分析のところで確認させて頂きたいのですが、左側に賃料の増額があり、右側が有利子負債で、右下に純利益の成長率試算値0.2から2.4%とありますが、これは、0.2というのは左の賃料増額率のところが5%で借換え金利上昇が80basisのケースで、逆に 2.4%というのは賃料を10 %上げられて、借換え金利が50basis上昇と、そういう理解で良いのかということと、足元想定している借換え金利上昇は何basisなのかお伺いしたい。
A:ALMの数字については、ご理解の通りです。襷掛けでやっておりますので、下限は増額の下限と金利上昇の上限で、これの襷掛けです。又、今後の金利の借換えの想定ですけども、先ほどの業績予想の前提というのが1つの考え方でして、固定化する場合に150basisという想定を置いていまして、これは考え方としては、5年で固定化するコストにバッファを乗せているというところでございまして、2月の5年の固定化コストというのは大体125でしたので、それに対して25basis乗せて、あとはラダーとの調整で見ていくという考え方です。我々のラダーを見ても、今後控えているリファイナンスについては、5年で十分スペースが残っているので、あとはこれを固定化することが今後どうなるかというところがありまして、スプレッドに関しては大きな変化はないと見ていますので、基本的には、ベースレートの想定をどういうふうに織り込むかっていうところを考えています。因みに、2月のリファイナンスは、リファイ前と後で全体のオールインコストがどれくらい上がったかというと大体70ぐらいです。これは先ほど申し上げた5年の固定化スワップコストを、それの前のものと比較したり、全部で考えたりするとそれぐらいなので、このALMの頁で置いている50から80という間の70だったのが、1つの実績としてあるというような状況です。

Q:LTVについてですが、35頁で、当面は現状の水準を維持、物件売却や自社株買いで上昇した場合は低減も検討とのことでしたが、低減というのはどうやってやるのか、又、当面そのような状況はありえそうなのか、これらの点に関して宜しくお願いします。
A:財務運営方針のLTVの考え方については、先ず、結論としては、当面LTVの低減が必要になる局面というのは考えておりません。今、自社株買いを、例えば前期 80億円で進めましたけれども、それによるLTVの上昇効果というのは0.3%とか、多くてもそれぐらいなので、この自社株買いを積極的に行ったとしても、LTVの水準というのは大きく上昇はしないと見ています。物件売却についても、資産の8%ぐらいを売却していますけど、LTVはこの水準で収まっているので、仮にそれを倍増したとしても、急激なLTVの上昇というのは見込めないので、基本的には負債を返済するという必要性は考えていないと見ていますで、実際にそれが起きた時にどうやるのかというのは、手元の資金、やっぱりキャピタルアロケーションのところで示している、76億円の未消化分を一部充当するということか、追加で物件を売却するということになります。それをやると、当然に負債コストというのはエクイティコストよりも安いので、分配金への影響というのは、相対的にプラス方向に働き難いというデメリットはあります。

Q:SPCの出資に関してですが、第一生命と出資されるケースのところで、真正譲渡性とか色々出ていますが、素人的な話ですが、SPC各々に対してどの程度出資できるのかというのは、都度変わってくるという認識で良いのかという確認をお願いします。
A:真正譲渡性の論点に関連するのですが、先ず出資割合に関しては、SPC の流動化に対する実務指針によると、この真正譲渡性は、基本的にはリスクと経済価値が移転されているかどうかというので判断されますと。それというのは、物件の適正な価格に対して概ね5%と定められています。つまり、物件100だったら、それに対して5%までのリスク負担、或いは経済価値の移転までは真正譲渡性を認めるというような解釈ですので、今回、その3.5を70で割ってもらえると5となりますので、そこを意識して出資割合を決めていて、それにレバを掛けているので、エクイティの割合としては、5%ではなて13%になっていると、こう言うのが数字のメカニズムなので、基本的には同じような取引をやる場合においては、物件価格の5%より下回った割合の中で決めていくというふうにはなります。

Q:仮に御社がマイノリティ出資であった場合でも、基本的には出資する先のSPCについては、Controllableですということで見て良いのか。何を言いたいかというと、物件を売却した後、そこに対して、又取得するということがあるかどうかわかりませんが、そういったことを起動的、且つ御社の都合としてできるのかどうか、その点について確認したいと思っています。
A:Controllableかどうか、これも申請譲渡性のもう一つのポイントとして、買い戻すことを前提としないことが非常に重要となってきます。それというのは、買い戻す義務がないか、そして買い戻す権利がないか、そして買い戻しの優先交渉権などが付いてないかとか、そういったところを監査法人と丁寧に協議するというのが大事で、結果的にはその買い戻しに対するControlというのは、あってはダメというのが原則的になります。ただ、当然出資者ではあるので、匿名組合出資の持分の割合に応じた、匿名組合出資者としての権利というものはありますと。ただ、今回は、2者間での共同なので、第一生命がマジョリティを取っているので、その点に関しては、第一生命が過半の部分については持っていますし、というところですが、全会一致は当然我々もというところで、そこは、特に新しいことはありませんが、この買い戻しの部分の手当っていうのは、このスキームにおいては非常に重要になります。

Q:33頁の三菱地所物流リートとの今回の流動化に関する協議というところですが、先ほ第一生命と似たようなところになるとは思いますが、私も真正譲渡のところは気になったところで、今仰っしゃるところを考えますとすと、SPCへの出資分が5%になるのかなという感じにするのですが、三菱地所物流リートに聞いたところ、この辺りは今後ラサールロジポートとの協議がなんだが、ということでしたが、このストラクチャを考えるということで、おそらく新しい物件を売却し、新しい物件を取得ということにも考えると思うんですけども、どういった今後のスキームというか、成長性というのを狙っていきたいのか、やっぱりなかなか複雑なので分かりにくいところがあるような気がしますので、そのあたりラサールロジポートとしてどのような考えがあるのか、三菱地所にどのような形で話を持って行き、提携ができたのか、そのあたりの背景を教えて頂ければと思います。
A:三菱地所との取り組みについては、スキームの論点整理という観点では、この狭山日高 の事例のあくまで派生系というか、基本的な論点というのは似ているものだと考えています。よって、今後論点を詰めていくとしても、具体的なスキームは、概ね我々としては、この狭山日高のところで整理できたかな、というように思っています。この取り組みの狙いというところは、我々の戦略にも、当然三菱地所の戦略もそうだと思いますが、ちゃんと売却益を実現するというところ、プラスその売却益を実現した上で安定的に、且つ、ある意味持続性のある売却のスキームの構築、例えば分割売却を行うとか、その同じ物件の同じ 持分のサイズ感を調整するとか、こういった取引というのは、第三者とやることは極めて難しいです。第三者というのは、外部売却をする時に、例えば1年後に決済してくださいとか、分割で都合よく決済してください、というのは非常に難しいので、これをリート同士でやるというのは、非常にやりやすいというのがあります。それが結構大きなポイントです。それで、最後にその出資の機会っていう意味ではこれも狭山日高と一緒ですけども、売却した資金を使い、一部高収益投資をするというところは、三菱地所との取り組みにおいては、自分達がかなり分かっている物件、しかも継続的に保有している物件であることの安心感というのもありますし、お互いが組成したSPCというのは、資金調達の観点でも信用力は2社分のものがあるので、それに基づく好条件とかファイナンスの条件の良いものが得られれば、というところで考えていますので、今までやってきたことを、より安定・継続、且つ良い条件でやるというのが狙いです。
以上です。有難うございます 。