ヘルスケア&メディカル投資法人 2025年1月期決算概要
ヘルスケア&メディカル投資法人
2025年1月期(第20期)決算動画説明書
○動画 https://www.video-streaming.net/ir/3455/2025_01_20/
○説明資料
https://hcm3455.co.jp/file/term-7104e2f9718416ffe8d4c0d9d68e412742a43971.pdf
○説明者 ヘルスケアアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長 石原 久稔
○説明
HCMは2015年3月に上場し、この度10周年を迎えることができました。これも投資主の皆様を始め、関係する全ての方々のご支援の賜物と、この場をお借りして心から感謝申し上げます。さて、HCMは、J-REIT唯一のヘルスケア専業リートとして、上場来厳選したオペレーターが運営する高齢者施設や、病院、不動産に継続的に投資を行い、その安定的な運用に注力しています。本日は、HCMの2025年1月期(第20期)の決算、並びに第21期、第22期の業績予想、そして足元のマーケット環境に則した運用戦略について説明させて頂きます。どうぞ宜しくお願い致します。
それでは、資料の2頁をご覧下さい。第20期のハイライトです。先ず業績面です。当期中に新たに有料老人ホームを物件取得した一方で、減価償却費や資産運用報酬等が増加した結果、前期比増収・減益となりました。一口当たり分配金は、前期比減少しましたが、昨年9月に公表しました予想値からは、8円増えて3,183円での着地となりました。又、一口当たりNAVは138,086円で、8期連続の上昇となりました。次に運用状況です。
新たな物件の取得により、期末時点の資産規模は、54件、827億円まで拡大しました。既存53件の鑑定評価額の合計は横這い、期末時点の含み益は121億円、含み益率は15.0%となりました。又、ポートフォリオの稼働率は、前期に続いて当期中も100%を維持しました。財務面では、物件取得資金として、新たに11.7億円の短期借入を行ったほか、期限が到来した既存の長期借入金55.5億円については、引き続き長期固定金利にてリファイナンスを実施しました。期末時点の有利子負債の総額は、428.2億円。全額ソーシャルファイナンスによる調達で、LTVは、総資産ベースで50.6%、時価ベースで44.2%となりました。尚、長期発行体格付は、A+(安定的)で変更はありませんでした。
3頁です。こちらが当期中に取得したツクイ・サンシャイン横浜戸塚の概要です。2019年3月に開業した定員66名の介護付有料老人ホームです。取得価格は11.5億円で、鑑定評価額の約96%です。オペレーターは、デイサービスを中核に、全国で介護・看護事業を展開している業界老舗のツクイで、HCMにとっては、初めてのオペレーターとなります。本件は、本資産運用会社の独自のネットワークを通じて、前所有者である個人地主のニーズを的確に捉え、スポンサー以外のウェアハウジング機能とレバレッジを活用して、タイムリーに取得したものになります。
それでは、決算の中身をもう少し詳しく見てみます。
6頁をご覧下さい。A列が第19期の実績、B列が昨年9月に公表した第20期の予想、そして、その右の列が第20期の実績値です。第20期は、新規取得物件からの賃料収入と、第19期に行った匿名組合出資に関わる配当収入により、営業収益は2,522百万円と前期比増収となりました。一方費用面では、減価償却費等の賃貸事業費用や、新規借入に伴う支払利息が増加し、又、昨年10月に開催した投資主総会の関連費用も嵩みました。これらの結果、当期純利益は1,024百万円、一口当たり分配金は3,183円と減少しましたが、予想比では8円増加しました。
7頁をご覧下さい。第20期の分配金の増減をBreak-downしたものです。投資主総会等の一時的な支出を除くと、主に減価償却費や第19期物件取得に伴う資産運用報酬、並びに金融コストの増加が分配金を押し下げています。
8頁です。B列が昨年9月に公表済みの第21期の前回公表予想、そしてC列が今回公表する新しい予想値です。先ず、トップラインの営業収益ですが、第20期に取得した資産からの賃料収入が通期で寄与し、又、匿名組合出資による配当収入増で、前期比24百万円の増、収、一方費用面では、減価償却費や修繕費、又、第19期、20期に取得した計6物件にかかる固都税等の賃貸事業費用が増加、又、第20期末に実施したリファイナンスに伴い、支払利息も増加する見込みです。
これらの結果、当期純利益は減益となる見込みですが予想比で横這い、一口当たり分配金は前回予想と変わらず3,140円を計画しています。D列は、今回新たに公表する第22期の業績予想となります。あく迄、新たな物件取得や売却がない前提ですが、営業収益は前期比微減を予想しています。これは2019年に2物件で実施した、介護業務効率化のためのシステム投資にかかる償却期間が終了したことに伴い、減価償却費相当の賃料上乗せ分が剥落するためです。一方費用面では、修繕費やER更新費用等の調査費が減少する見込みです。これらの結果、一口当たり分配金は、現時点では第21期と同額の3,140円を予想しています。
9頁は、第21期、並びに第21期の予想分配金の増減をBreak-downしたものです。引き続き金利上昇による支払利息の増加が、分配金減少の大きな要因となっています。
10頁です。グラフの通り、一口当たりNAVは堅調に推移しています。引き続き中長期的に安定的な分配とNAVの伸長を目指してまいります。
次に運用状況です。12頁をご覧下さい。こちらには第20期末時点のポートフォリオの主なデータを示しております。資産規模は、取得価格ベースで54物件、827億円に拡大、平均鑑定NOI利回りは5.5%で変わらず、物件の3大都市圏比率も81.6%と、引き続き高い水準を維持しています。
次の13頁は継続鑑定評価の概要です。全54物件の鑑定評価額の合計は932億円、期末時点の含み益は121億円、含み益率は15.0%です。又、新規に取得した物件を除く既存の53物件で見てみると、8物件でER上の長期修繕費用の上昇等により、鑑定価格が下落しましたが、合計では前期比横這い、キャップレートが上昇した物件はありませんでした。
15頁をご覧下さい。HCMの大きな特徴の一つは、長期安定的なCash-Flowです。当社は、きめ細かなDue-Diligenceや継続的なMonitoringを通じて、オペレーター、並びに施設の運営状況をしっかりと見極め、安定的なポートフォリオの構築に努めています。2015年の上場来、コロナ禍においても、オペレーターの退去や賃料が減額になったケースは1件もありません。
当社では、社内に専門部署であるヘルスケア業務推進部を設置し、オペレーターの業歴・業容や財務内容、事業モデルはもとより、コンプライアンス面、人材の採用、育成方針、ICT化を始め、業務の効率化に向けた施策の実施状況などについて、経営陣や現場の施設長との定期的なコミュニケーションを通じて、しっかりと確認しています。又、ヘルスケア業界に関する情報収集、調査・分析なども積極的に行っています。
HCMが保有する物件のオペレーターは、この度ツクイが加わり全部で17社になりました。シェア別では、スポンサーのシップヘルスケアグループのグリーンライフが22.8%でトップ、これに業界大手のSOMPOケアやベネッセスタイルケアが続きます。医療法人協和会は、HCMの中核物件の一つ千里中央病院のオペレーターで、地元である兵庫県川西市の総合医療センターの運営にも、指定管理者として携わっている大手医療法人です。
ここで、オペレーターの1社であるサンウェルズについて、少しお話させて頂きます。同社においては、昨年9月に不正な診療報酬請求を行ったとする報道を受けて、特別委員会を設置し、業務実態の調査を進めてきました。その結果一部で、本来請求すべきではない診療請求を請求していた事案が判明し、同社は、過去決算の修正と再発防止策の作成を発表しました。HCMは、同社が運営する住宅型有料老人ホームPDハウス東大阪を保有しています。現状賃料支払いや事業継続に支障をきたすような事態は発生しておりません。同社の経営陣とは密にコミュニケーションができており、引き続き注意深くMonitoringしてまいります。
尚、当該施設のHCMのポートフォリオ全体に占める割合は、取得価格ベースで0.8%です。HCMは、オペレーターとの間で、原則賃料固定、長期の賃貸借契約を結んでいます。第20期末時点で、オペレーターとの賃貸借契約はすべて固定賃料で、平均残存年数は11.0年です。その中で、1年以内に契約期限が到来する施設は3件ありますが、いずれも大手のオペレーターが運営しており、稼働も安定しています。うち、まどか南浦和とそんぽの家狭山については、原契約の規定に基づき、同条件にて3年間の期限延長となる見込みです。又、リハリビルームボンセジュール四つ木についても、更新に向けてオペレーターと協議を進めてまいります。
16頁の通り、実際の賃貸面積を賃貸可能面積で割り算した稼働率は、上場来概ね100%です。個々の施設の入居率も、平均90%前後で安定的に推移しています。
続いて財務状況です。
18頁をご覧下さい。金融当局の政策変更に伴い、足元、金利の上昇傾向が続いています。HCMとしては、引き続き金利動向に留意しながら、財務の健全性と分配金への影響を踏まえ、バランスの取れた財務運営を継続していく方針です。具体的には、原則として借入は長期で、金利についてはスワップにより固定化を図りますが、環境に応じて一部短期、又は変動金利でも調達も柔軟に検討してまいります。又、LTVについては、これまで総資産ベースで50%程度前後を目途としてきましたが、今後は時価ベースも考慮しながら、水準をコントロールしてまいります。当期末時点での有利子負債の状況ですが、総額428.2億円、全額ソーシャルファイナンスによる調達で、前期末比11.7億円増加しました。平均金利は0.96%、又、固定金利比率は97.3%と、引き続き高い水準です。LTVは総資産ベースで50.6%、時価ベースでは44.2%でした。
19ページは、第20期末に実施したリファイナンスの概要です。当局の政策変更等により、更なる金利の上昇が想定されること、又、新規物件取得による増収分で、金利固定化コストを一定程度賄えると判断し、従来の基本方針に則り、長期固定金利での借換えを実施しました。又、銀行団に新たに千葉銀行が加わり、借入先は全部で17社となりました。三井住友銀行を中心とするバンクフォーメーションを維持しつつ、借入先の分散も進めてまいります。下の図は、本件リファイナンス後の、返済期限の分散状況を示したものです。平均残存年数は3.1年になります。
次は外部成長の取り組みです。
21ページはこれまでの外部成長の歩みです。3度の公募増資等を通じた物件取得により、資産規模は827億円まで拡大し、中期目標として掲げる1,000億円が、視野に入っています。
22頁です。ヘルスケア不動産を取り巻く環境ですが、不動産の取引価格は依然として高止まりしています。建築コストの上昇により、新規の開発案件が減少している一方で、オペレーターのM&Aなど、業界再編の動きに伴う不動産の流動化や、個人オーナによる売却ニーズが増加傾向にあります。又、足元のJ-REIT市場は、総じて投資口価格が軟調に推移しており、公募増資によった外部成長は非常に厳しい状況です。
こうした環境下、当社として、先ずは、これまで通り当社の強みである多様なスポンサーサポートと、幅広いネットワークを活用して、良質なパイプラインの拡充に努めてまいります。あくまで中長期的な収益力や分配金の持続的な成長を重視し、投資目線や利回り目線をいたずらに引き下げることは考えていません。HCMが有するパイプラインは、稼働状況や取得の蓋然性によって、適宜洗い替え、管理をしています。
ツクイ・サンシャイン横浜戸塚の組入れや、洗い替えを行ったうえでも増加しており、現時点で350億円の規模に上ります。主として、スポンサー自身のB/Sにて、又は、別途設立したブリッジファンドのほか、スポンサー以外の外部のリース会社等が一時保有しています。資金調達の環境や、物件の稼働状況に留意しつつ、適宜・適切なタイミングでのHCMへの組入れを目指してまいります。
又、スポンサー以外の外部の会社のウェアハウジング機能の活用や、手元資金によるブリッジファンドへの匿名組合出資等も行ってまいります。次にレバレッジを活用した物件取得を進めてまいります。先ほど申し上げました通り、LTVの水準については。不動産の時価も考慮しながらコントロールしてまいります。仮に総資産ベースのLTVを、55%まで引き上げた場合の調達余力は、約80億円になり、その場合の時価ベースのLTVは48%台となります。又、既存物件との入替を通じて、含み益の実現とともに、ポートフォリオの質の向上を戦略的に図ってまいります。尚、HCMは、上場後10年を経過したことから、IPO時より保有している15物件は、2026年以降買替特例の対象となります。頁右下には、最近の主な取り組み事例を記載しています。第16期には、HCMとして初めて資産入替を実施しました。第19期、20期には、フルレバレッジでの物件取得、又、第21期には、第19期に続き手元資金を活用して、6物件を裏付けとするブリッジファンドへの匿名組合出資を行う予定です。
23頁はその概要になります。一部のパイプライン物件の想定保有期間終了に伴い、新ファンドを組成し、優先交渉権を確保、併せて今回出資したことで、ブリッジ期間中においても、HCMに収益貢献することになりました。
次にESGの取り組みです。
27頁をご覧下さい。当社はESG委員会を設置し、全社を挙げてESGの取り組みを推進する体制を構築しています。HCMは、投資理念に掲げている通り、社会インフラともいえるヘルスケア施設の整備・拡充を支援し、国民一人一人が安心して生き生きと生活できる社会の実現を目指しています。ESGやSDGsと親和性が高いと考えています。
28頁は最近のトピックスです。当社では2022年度からGRESBに参加しておりますが、3年目となる昨年度は、リアルエステイト評価で1-Starおよびグリーンスター、又、開示評価では3年連続で最上位のAレベルを獲得しました。Social面ですが、HCMは上場時からポジティブな社会的成果を生み出すインパクト投資を行っています。その資金調達であることを明確にするため、ソーシャルファイナンスフレームワークを制定し、JCRから最上位の総合評価を取得しています。
20期末現在、HCMの有利子負債は、全てソーシャルファイナンスによる調達となっています。尚、調達した資金の運用状況については、他のESGの取り組み状況とともに、HP上のインパクトレポートに開示していますので、是非ご覧頂ければ幸いです。ガバナンス面では、当社では自律的なコンプライアンス意識の醸成を目的として、定期的にコンプライアンス勉強会を実施しています。これには、私自身や常勤取締役を含む全役職員が参加しています。こうした、充実したESG研修体制が評価され、今般、不動産証券化協会が主催する「ARES ESGアワード2024」において、「グッドアクション賞ガバナンス部門」を受賞しました。
本日の私からの説明は以上になります。
足元の業績は順調に推移し、金利やコストの上昇も、トップラインの収益をあげることで影響を極小化できています。一方で、将来の成長の糧となるパイプラインは増加し、ファンド化による期限延長など、必要なメンテナンスも行っています。私共としては、これからも専業リートならではの目利き力を生かした、優良なヘルスケア施設への投資を通じて、トップライン収益の増強を図り、そしてコスト面の見直しも随時行いながら、安定的な分配金を目指してまいります。今後とも、ご支援賜りたく宜しくお願い申し上げます。本日は、ご視聴有難うございました。