ヒューリックリート投資法人 2024年8月期決算概要

ヒューリックリート投資法人
2024年8月期(第21期)決算動画説明書&質疑応答
○動画  https://www.net-presentations.com/3295/20241017/x5aauy9r/
○説明資料
https://www.hulic-reit.co.jp/file/top-72329552766bd8ab3779973b1919d0f9d810e519.pdf
〇質疑応答(要旨)
https://www.hulic-reit.co.jp/file/news-b6f3273b02af834639f78bac73b6c554bed54caa.pdf
○説明者 ヒューリックリート投資法人 執行役員 兼
ヒューリックリートマネジメント株式会社 代表取締役社長 一寸木 和朗
○説明 
ヒューリックリート投資法人の第21期(2024年8月期)決算についてご報告申し上げます。先ず、決算説明資料の表紙をご覧下さい。2014年の本投資法人上場以来、表紙に記載してきましたTOKYO NEXT+に変えまして、今回よりTOKYO GROWTH & STABILITYを掲げました。これは上場来の環境変化等を踏まえ、今般、運用ガイドラインの変更を実施したことに伴うもので、後ほど詳細につき説明致します。
それでは資料4頁のエグゼクティブサマリーをご覧下さい。

外部成長につきましては、資産入替を継続し、資産規模は、概ね横這いの3,927億円となりました。第20期以降、成長性向上を企図した資産入替戦略に転換しておりますが、現在、新運用ガイドラインに基づく資産入替施策を検討中であり、今期(2025年2月期)中を目途に、早期実現を目指しています。次に内部成長ですが、オフィス稼働率は、第22期以降、複数物件で退去が見込まれますが、いずれも順調に埋め戻し、テナント分散が図られる見込みです。従って、稼働率は高水準で推移し、22期予想平均稼働率は、旧予想を上回る 98.4%、第23期も同水準を見込んでいます。

又、マーケット賃料の上昇基調を背景に、契約賃料の増減率は、テナント入替において第21期からプラスに転じ、第22期も現時点でプラスを維持しています。又、賃料改定においては、継続してプラスを確保しています。財務戦略は、日銀の利上げが7月に実施されたものの、今後の利上げについては、内外経済、景気動向を見極める時間的余裕はあるとの認識のもと、一部変動金利調達を継続し、固定金利による調達比率 は92.2%となっております。又、LTVは、物件入替を通じ前期比微減の45.7%とし、財務 安定性を確保しています。これらを踏まえた分配金戦略ですが、第21期も資産入替を含む外部成長、内部成長戦略の継続により、調整後EPU、EPU実績とも、夫々予想比+2%、+2.1%の増加となりました。

第22期以降の業績予想については、現時点では、従来維持してきたDPU3,480円水準を上回る3,500円を見込み、調整後EPUは旧予想の3,350円を維持しています。今後、新運用ガイドラインに基づく成長施策の早期実施により、長期保有資産の買替特例も活用しながら、DPU、調整後EPU水準の継続的な向上を目指しています。

5頁で運用ガイドラインの改定について説明します。先ず、改定の理由としては、マーケット環境の改善に伴い、ポートフォリオの成長性向上方針を明確化するとともに、インフレ耐性の強化により、収益性の向上を目指すことにあります。又、同時に、上場來の環境変化により、次世代のアセット・プラスが、従来の固定賃料契約の長期安定性のみならず、インフレ環境下での収益性の低下懸念も意識されることから、ポートフォリオ構成の意義を見直し、特徴を明確化することとしたものです。

こうした背景から、来年1月の長期保有資産 買替特例の要件充足を機に、本格的な資産入替を展望し改定を行ったものです。次に改定の内容ですが、成長性向上を明確化するため、従来の次世代アセット・プラスに分類していたホテルの投資比率を、概ね20%に引き上げ、変動賃料を含めた成長を目指す一方、その他の固定賃料を中心としたアセットについては、概ね10%に引き下げることとしました。即ち、現環境において、オフィス・商業施設・ホテルの3本柱を中心に、成長性向上を目指すという方針を、より明確にお示しするため、TCPとNGA+の分類は廃止しました。本投資法人は、東京都心・好立地主体のポートフォリオの競争優位性を背景に、マーケット環境に適用しながら、成長性と安定性を兼ね備えたポートフォリオ戦略を推進していくとの意味を込めまして、TOKYO GROWTH & STABILITY、東京都心・好立地と掲げた次第です。その上で現環境において、成長性向上を重視した運営に注力することとしています。

7頁は、分配金と調整後EPUの推移です。第21期も資産の入替を実施し、約5.8億円の譲渡益計上に加え、取得資産の賃収が寄与し、DPUと調整後EPUは、旧予想から予想、実績と時点を経るごとに増大しました。第22期以降は、現時点で資産入替等は織り込まない前提でDPU3,500円、調整後EPUは3,350円を想定しています。

8頁以降でDPUの増減要因について説明致します。第21期DPU実績については、期中取得した亀戸富士ビルの取得効果、ホテルやホール・カンファレンス収益の上振れや諸費用の減少等合計で、輸送費+74円、2.1%の増加となり、調整後EPUでは、同じく+68円、2%の増加となりました。

9頁の第22期の新予想については、第21期の物件入替による譲渡益の剥落、期間収益の増加 等により-197 円、オフィスのダウンタイムや、年1回計上のホテル変動賃料の剥落等で-110円を見込んでおり、調整後EPUは3,350円とし、現時点においては、内部留保を150円取り崩す想定でDPU3,500円としています。第23期予想は、オフィスのダウンタイムの一方で、ホテル変動賃料の計上により+46円、諸費用の増加は-46円を見込み、DPU、調整後EPUとも前期と同額としています。

続きまして11頁以降は運用実績です。資産規模は、資産入替の継続により、第21期末で67 物件3,927億円となり、LTVは前期比微減の45.7%で推移しています。
12頁は第21期末のポートフォリオ構成ですが、中央の円グラフのオフィスは、駅徒歩1分以内の比率、都心6区比率とも、J-REIT全体を大きく上回る都心・駅近比率を維持しています。人材確保は、課題とされる昨今、立地・通勤利便性改善ニーズは一段と高まっており、稼働や賃料の改善に、従来にも増して優位性を発揮しているものと考えています。

13頁は資産入替の実績です。第13期以降、毎期資産入替を継続し、頁右下のNOI利回りや 築年数の改善等、ポートフォリオの収益性やクオリティを高めながら、累計50億円の譲渡益を分配金の安定化や成長に活用してきました。第21期の資産入替も、利回り改善による収益力の向上を図っており、譲渡したヒューリック東日本橋ビルは、鑑定価格を10%以上上回る価格で外部売却し、約5.8億円の譲渡益を計上する一方、取得した亀戸富士ビルも鑑定価格を10%以上下回る価格で取得し、含み益を確保しています。

14頁以降で、内部成長の実績について説明致します。先ず、オフィスの稼働状況ですが、左上の第21期入退去は予想通りとなりました。第22期は、前回予想を上回る退去が見込まれ、第23期もほぼ同水準の退去見通しとなっていますが、順調に埋め戻しが進んでおり、同期間において退去規模相当の埋め戻しを見込んでいます。右側に主な入退去物件を示していますが、これらの退去については、第23期末時点で五反田山手通りビルの一部区画を除き、いずれも入居契約締結済み、乃至、それに準ずる状況で入居予定です。これらの埋め戻しにより、高田馬場ビルは退去1テナントが入居2テナントに、お茶ノ水ソラシティは退去2テナントが入居7テナントに分散が進む予定です。この結果、頁下段のオフィス契約稼働率は、第21期末98.9%から退去・埋め戻しを得ながら、第22 期末98.7%、第23期末98.9%へと回復し、期中平均稼働率は98.4%を見込んでいます。

15頁はオフィスの賃料動向です。頁左上のテナント入れ替えにおける賃料増減については、第21期は10.7%の賃料増加率に転じており、第22期も現時点でネット増加を維持し、増額面積も拡大しています。これら増額、入替となった区画の内訳は、全テナント賃料がマーケット レンジよりも低い区画のみならず、レンジ内も4割以上占めています。又、下段の賃料改定についても増額基調が継続しており、こちらもマーケットレンジ内、マーケットレンジ以上のテナントでも増額実績を上げています。マーケットレンジ未満のみならず、レンジ内のテナントも含めた賃上げ交渉が成果につながった形です。

16頁は賃料増額の実績事例です。上段のテナント入替では、麹町ビル、五反田ビル、両国ビルのいずれも、駅徒歩1分乃至2分の利便性の高い物件で、麹町、五反田の両ビルは、館内増床で5%超の賃料増額となりました。下段の賃料改定においても、神保町ビル、五反田 山手通りビルの5%超の増額更改を始めとして、各エリアの駅近物件において、賃料の増額事例が増加傾向にあります。賃料上昇モメンタムを捉え、マーケット賃料レンジ内のテナントも含めた増額交渉を継続します。

続いて17頁は商業施設の状況です。商業施設の稼働率は100%を維持しており、契約期限の到来に向け賃料増額を目指しています。左下円グラフに示す通り、保有物件の8割超が 都市型商業施設で、残存期間2年以内の契約が、スポンサーの固定賃料のマスターリース契約を除き4割弱あります。施設ごとの営業状況は、立地や業態により差はあるものの、回復基調が続いています。特にHULIC & New 2物件については、右下のテナント売上推移の通り、第21期合計で、コロナ前の2019年実績を平均62%上回っています。こうした売上回復動向も踏まえ、第21期に一部テナントとの賃料増額も実現しており、今後の再契約において賃料増額を目指します。商業施設についても、エリアの繁華性や立地競争力を反映し、内部成長も期待できるものと考えています。

18頁はホテルの運営状況です。青いグラフのADR、オレンジのRevPARは、コロナ前2019年の実績を大きく上回り、第21期平均のRevPARは、2019年対比139まで上昇しています。その結果、第21期に計上される変動賃料は、68百万円と2019年を大幅に上回りました。次回第23期計上の変動賃料については、昨年12月のホテル追加取得効果を、今年度初からの高いパフォーマンスの継続を一定程度見込み、171百万円への増加を見込んでいます。この前提において、ホテルの変動賃料割合は10.7%に拡大しますが、今後、変動賃料契約を有するホテルの追加取得により、固定賃料をベースとした上で、変動賃料割合を更に高める方針です。又、下段は同じく売上連動型のホール・カンファレンス の運営状況です。稼働実績は、コロナ前3年平均近辺に回復する一方、利用料の値上げや利用単価の向上等もあり、収益ベースで着実に前年同期を上回っておりますが、業績予想上は保守的な想定としています。

続きまして19頁は財務の状況です。第21期は、足元の金融政策動向等を見極めながら、一部変動金利での借り換えも継続し、調達金利の上昇を抑制し、固定金利比率は92.2%になりました。日銀による7月の利上げ前から、投資法人債の発行検討を進めていたこともあり、8月に計画通り5年債30億円を想定以下の発行条件で調達することができました。今後、内外経済状況等の見極めには相応の時間を要し、現時点で日銀も利上げを急ぐ方針にはないと考えておりますが、調達コストの抑制と金利上昇リスクを十分に考慮しながら運営していきます。

20頁の鑑定評価については、頁右上キャップレートはホテル等6物件で低下し、61 物件で横這いとなりました。この結果、第21期末の含み損益は、23億円増加の747億円、含み損益率も+19.5%となりました。内外の不動産投資動向は、引き続き堅調で、売買マーケットでの高値圏の取引が継続していますが、市場動向を注視しながら、資産入替施策による 含み益の一部実現も検討しています。

22頁以降はESG対応です。頁下段直近のトピックとしては、GHG排出量削減に関する KPIの改定を実施した上で、7月にSBT認定の取得に向けた申請を完了しています。
23頁上段に改定前後のKPIを記載していますが、GHG排出量については、SBT認定基準に準拠して再設定し、従来の排出原単位から排出総量に切り替えました。2022年実績対比2030年の削減目標として、スコープ1、スコープ2は42%の排出総量を削減、スコープ3は25%の排出総量削減としています。その他エネルギー消費量の削減は、省エネ法上の基準に統一し、グリーンビルディング認証の取得比率は、物件数ベースから延床面積ベースに変更しています。下段のGHG排出量とエネルギー消費量の実績は、改定前ベースの開示となっていますが、次回更新以降、新KPIベースにて開示致します。

以上踏まえまして、26頁以降で、今後の戦略について説明致します。ポートフォリオ戦略における資産入替方針としては、右下円グラフに示す新運用ガイドラインの通り、ホテルの比率を概ね20%に引き上げ、固定賃料中心のその他のアセットを、概ね10%に引き下げる方針に沿って進めていくことになります。取得方針としては、収益の安定性を基本とし、変動賃料の受け入れによる、成長性の期待できるホテルを優先的な取得対象とします。譲渡 方針としては、現状のインフレ環境下において、固定賃料契約で収益力の低下が懸念される物件が検討対象となりますが、賃貸収入や競争力の低下が懸念される物件についても、併せて検討対象としていきます。以上の成長性向上に向けた資産入替施策を現在検討中であり、期中の早期実現を目指し実行したいと考えています。

27頁は内部成長戦略です。東京ビジネス地区の空室率低下や平均賃料の上昇等を受け、本 投資法人の賃料ギャップも改善し、オフィスポートフォリオに占めるマーケットレンジ未満、レンジ内の合計比率は5割を超えてきています。前段で説明の通り、マーケットレンジ内のテナントの賃上げ実績も増加しており、引き続きレンジ内も含めた5割超のテナントを対象に、賃料増額を目指します。右上の賃料更改スケジュールの通り、オフィス契約の 69%が2年以内に期限が到来するなど、比較的短期間で賃料交渉タイミングを迎えます。又、保有オフィスの特徴として、契約面積200坪未満、賃料坪単価3万円未満の中規模オフィス中心のポートフォリオで、駅徒歩5分以内が96%を占めるなど、競争優位な状況を生かしながら、継続的な賃料増額に取り組んでいきます。

28頁は、以上の資産入替、内部成長戦略を踏まえた分配金戦略です。これまで説明致しました内容を、DPUと調整後EPUの成長イメージとして図示しています。
成長性の期待できるホテル等への入替や賃料増額等を通じ、インフレ耐性を高めながら調整後EPUの向上を継続的に図るとともに、資産入替による譲渡益を圧縮積立の活用により、継続的なDPU成長に繋げる取り組みです。

29頁で、DPUと調整後EPU成長のアップサイドポテンシャル について説明致します。先ず、上段のDPUですが、新運用ガイドラインに基づく資産入替を前提とし、ポートフォリオ全体の5%程度の資産譲渡を想定した場合、譲渡益によるDPUのアップサイドポテンシャルは、含み益総額の5%相当として約37億円、DPU換算で2,080円程度と試算しています。譲渡を複数期に亘り継続的に実施し、一部圧縮積立を行うことにより、内部留保の拡充、活用を継続的に行う想定です。次に下段の調整後EPUですが、譲渡資金は物件取得に充当しますが、譲渡は複数期に亘ることもあり、借り入れ余力や手元資金の活用による物件取得も想定しています。

LTVで40%程度を目途とした場合の借入余力約100億円と、手元資金90億円の活用による物件取得で、調整後EPUへの寄与は合計150円程度と試算されます。又、内部成長では、オフィス賃料稼働率の98%程度への向上や賃料増額改定等で130円程度、ホテル変動賃料のRevPAR10%改善で20円程度、合計150円程度の寄与と試算しています。以上の物件取得と内部成長で、合計300円程度が調整後、EPUのアップサイドポテンシャルとして、第23期予想の調整後EPU3,350円からの成長期待となります。その実現動向に応じ、総額2,080円程度のDPUのアップサイドポテンシャルを継続的に活用し、DPUの継続的成長に繋げていくことを想定しています。その第一歩として、現在検討中の資産入替施策を極力早期に公表できるよう検討を進めてまいります。
私からの説明は以上です。