ヒューリックリート投資法人 2023年8月期決算概要

ヒューリックリート投資法人
2023年8月期(第19期)決算動画説明書&質疑応答
○動画  https://www.net-presentations.com/3295/20231018/eo8g6sj/
○説明資料
https://www.hulic-reit.co.jp/file/news-a1ab66c5341ff90adc45b6ee5c506526487c77b5.pdf
〇質疑応答
https://www.hulic-reit.co.jp/file/news-825d6ce7fed8f65db1c27f52cc7ccbbcf87f578a.pdf
○説明者 ヒューリックリート投資法人 執行役員 兼
ヒューリックリートマネジメント株式会社 代表取締役社長 一寸木 和朗
○説明 
ヒューリックリート投資法人の第19期(2023年8月)決算について報告致します。
決算説明資料に基づき説明致します。
それでは、資料4頁のエグゼクティブサマリーをご覧下さい。先ず、外部成長につきましては、第19期以降も資産入替を継続し、212億円の物件取得の一方、219億円の物件譲渡により、資産規模は3,804億円となっております。これにより、現時点で、運用上の潜在的リスクを有すると考えられる物件の譲渡は完了しておりますので、今後はポートフォリオのクオリティや成長性等を目指した資産入替を推進してまいります。次に右上の内部成長ですが、オフィス稼働率は18期を底に回復傾向を続け、20期末には旧予想を1.3ポイント 上回る98.7%まで上昇する見込みです。入退去動向は、超過トレンドを継続し、契約稼働率、賃料稼働率とも改善しながら、両者の乖離も縮小傾向にあり、賃料増額事例も増加しています。左下の財務戦略は、現状、長期固定金利による調達比率を100%とし、財務安定性を確保していますが、今後の金融政策や市場動向に応じ、一部変動金利調達も検討致します。又、6月に公表しましたスポンサーによる本投資法人投資口の追加取得が完了しましたので、上場時の保有割合である12.5%に上昇しました。これらを踏まえ右下の分配金 戦略ですが、譲渡益を計上し、分配金を安定化する一方、代替物件の取得等により、当期純利益から譲渡益等を除いた調整後のEPU水準を引き上げております。後ほど説明致します外部成長、内部成長の諸施策を通じ、この調整後EPUの向上に引き続き取り組んでまいります。

資料6頁は、その分配金と調整後EPUの推移です。19期分配金実績は、予想と同額の3,480円、20期、21期予想も同額の3,480円としています。調整後EPUは19期実績、20期新予想とも旧予想を上回る3,358円、3,325円となっています。この主な増加要因は、旧予想時点で織り込んでいなかった一部譲渡代金の再投資として、ヒューリック小舟町ビルの取得を行ったこと等によるものです。

7頁以降で分配金の増減要因について説明致します。先ず、19期分配金実績については、 小舟町ビルの取得効果で+37円、ホール・カンファレンス収益の上振れで+6円、その他、解約違約金収入等により+56円となりました。これにより、調整後のEPU実績は、予想比+73円、+2.2%の上振れとなりました。この結果、当初想定していた内部留保の取り崩しは不要となり、今後の分配金の安定化のため積み増しを行い、19期末時点の内部留保額は一口当たり367円となりました。

8頁の20期分配金の新予想について、19期実績に対し、先ず、資産入替要因の-58円は、19期の資産入替のうち、銀座7丁目ビルの2回目の譲渡を20期初に実施したことによる、期間収益の減少を主因とするものです。又、オフィス稼働率98.1%への上昇等の内部成長により+35円、修繕費や金利上昇要因等-37円を見込み、分配金を3,480円としています。21期分配金予想は、銀座7丁目ビルの譲渡益剥落要因で△155円、オフィス稼働率98.5%への上昇等内部成長により+43円、固都税増加要因等により△68円を見込み、180円の内部留保取り崩しにより、分配金は3,480円を維持しています。これらの前提において、21期末(2024年8月期末)時点の内部留保額は一口当たり187円を想定しています。
続きまして10頁以降は、運用実績です。資産規模の推移は、コロナ禍以降の資産入替により、足元65 物件、3,804億円、LTVは44.8%となっています。コロナ禍以降、安定性重視の資産入替を実施してきましたが、今後は、成長性向上等も目指した入替を推進していく所存です。

11頁左上のポートフォリオ構成は、オフィスが65.9%、商業施設を含むTCPで76.9%、 NGAプラス(次世代アセット・プラス)は、有料老人ホームの11.8%をはじめとして23.1%となっています。又、資料中央のTCPは、駅近比率、都心6区比率において、引き続きJ-REIT全体実績を大きく上回っており、テナントの立地改善ニーズの高まりを受け、稼働の改善に寄与しているものと考えています。

12頁は、コロナ禍以降の資産入替の実績です。13期から継続して資産入替を行い、資料中段の通り、毎期譲渡益を計上しています。譲渡益の累計は44億円を超え、分配金実績への上乗せとともに、内部留保を通じて分配金の安定化を図っています。これら資産入替効果としては、資料下段の安定性向上やリスクの低減とともに、NOI利回りも改善しています。これまでの資産入替により、現時点で潜在的リスクを有すると判断される物件譲渡は、完了したと認識しており、今後は、クオリティや成長性向上を目指した資産入替を推進していきます。

13頁で前回の決算発表日以降、7月に取得した小舟町ビルについて説明致します。本物件は、銀座7丁目ビル売却資金の一部を取得に充当したもので、NOI利回り4%を確保し、入替による利回り改善を図っています。小舟町エリアは、明治13年に富士銀行の前身の一つである安田銀行の開業の地で、みずほ銀行小舟町支店として現在に至っています。周辺には、東京証券取引所や日本銀行、金融機関等が多数所在し、本物件の1階から3階に銀行店舗、4階から12階はオフィスフロアとして100%稼働しています。
続いて14頁以降で、内部成長の実績について説明致します。先ず、オフィスの入退去動向ですが、左側グラフの通り、17期以降、入居契約締結が解約申し出を上回る入居超過トレンドが継続しています。19期の入居面積の実績は予想を上回り、又、20期以降の退去も限定的と見込んでおり、更なる稼働の改善を想定しています。
15頁は、この入退去予想を反映した稼働率推移です。ブルーの折れ線グラフはオフィス稼働率で、濃い折れ線が契約稼働率、薄い折れ線は賃料稼働率です。オフィスの稼働率は18期中に底打ちし、回復トレンドを維持しており、20期末は旧予想を1.3ポイント上回る98.7%を見込んでいます。契約稼働率と賃料稼働率の乖離も、下段の表の通り、21期0.4%へと縮小する見込みです。

次に16頁はオフィスのリーディング状況ですが、前期リーシング強化物件とした、神谷町ビルも埋め戻しが進み、2024年1月に98.3%への回復を見込んでいます。神谷町ビルをはじめ港区保有物件は、右上グラフの通り同時期に退去が重なったことで、稼働率が90%を割り込んだ時期もありましたが、いずれも最寄り駅徒歩1分以内の利便性もあり、港区マーケット平均稼働率を大きく上回る見込みです。このようにテナント動向の活発化により、稼働率は継続的に改善を続けており、賃料面でも増額、入替等の事例に繋がっています。資料下段の事例は、19期、20期入居の増額入替ですが、半数が10%を超える賃料増額となっています。

17頁はオフィス区画の賃料動向です。テナント入替において、全テナント賃料からの増減については、左上の通り、19期はネットでマイナスの8.1%となりましたが、退去面積の減少により、入替面積も減少していることから、収益への影響も限定的となっています。又、先ほど説明しました増額入替の半数は、翌20期の実績として計上されることになります。又、右上の賃料改定についても、19期は、2.8%の増額率となるなど改善傾向が見られています。左下の保有物件のマーケット賃料の推移を見ますと、殆どの物件が2期連続で据え置きを表す薄いブルーとなっており、保有物件について、マーケット賃料の下げ止まり感が見て取れる状況です。賃料ギャップについては、資料右下の通り、グレー部分の賃料ギャップがプラスの物件割合が、半分程度を占めており、平均6.6%のプラス水準にあります。賃料更改に際しては、マーケット賃料の横這い基調も踏まえつつ、賃料ギャッププラスのテナントについては現状維持、マイナス先には増額改定を目指していきます。

続いて18頁は商業施設の状況です。商業施設は、神宮前ビルで9月末に物販区画に退去が発生しましたが、キャットストリート沿いの立地競争力を発揮し、ダウンタイムなく埋め戻しが完了しました。旧予想では埋め戻しを見込まず、稼働率98.6%への低下を織り込んでいましたが、新予想においては100%稼働のアップサイド要因となりました。全商業施設のテナント構成は、スポンサーへの固定賃料のマスターリースが27%を占め、長期契約主体の安定的な契約形態となっています。

19頁はホテルの運営状況です。折れ線グラフは、ホテル3物件について、コロナ禍前2019年の各指標の実績を100とし、2020年1月から2023年8月における運営実績を指数化しています。折れ線グラフが100のラインを上回れば、2019年同月の運営実績を上回ったことになります。コロナ関連の各種制限撤廃により、昨年後半から急速に運営状況が回復し、19期のRevPAR平均実績は、コロナ前を上回る103となっています。2019年は歩合賃料が3,800万円発生しており、今後ともインバウンド回復等により上昇基調が続けば、再度歩合賃料の発生が期待されるところです。こうした動向も踏まえ、固定賃料をベースとしながらも、変動賃料の確保も念頭に、ホテルの取得検討に注力していく所存です。又、下段は、同じく売上連動型の施設として、お茶の水ソラシティと浅草橋ビルのホール・カンファレンスの運営状況です。ホテルと同様に、コロナ禍前3年間の稼働実績を100として、2020年以降の実績を指数化しています。稼働は着実に回復傾向にあり、これに応じて右側の収益実績も、直近1年で7,500万円前後まで回復し、業績予想上も同程度を見込んでいます。季節要因等もありますが、今後も回復が期待できるものと考えています。

20頁は財務の状況です。19期末の有利子負債の平均残存期間は4年を維持し、現状100%長期の固定金利調達としておりますので、今後の金利上昇リスクについては、下段の返済スケジュールの通り分散されることになります。内外インフレ状況を睨み、金融政策動向が注目されるところですが、今後のインフレの持続性や金利動向を見極めながら、一部変動金利調達の活用も含め、適切な運営を検討していきます。

21頁の鑑定評価については、右上のキャップレートの推移の通り、一部のオフィス、商業施設等計5物件で低下しましたが、61 物件は横這いとなりました。この結果、19期末の含み益は715億円、含み益率も18.6%となっています。前期対比で含み益が8億円減少していますが、物件譲渡やコスト要因等によるものです。売買マーケットでの高値圏の取引状況は継続していますが、市場動向を引き続き注視していきます。

23頁以降はESGへの取り組み状況です。先ず、外部評価については、2023年のGRESBで、最高位の5-Starsを4年連続維持し、又、MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数の構成銘柄にも、引き続き選定されています。又、右下の環境関連のKPIも順調に進捗し、エネルギー消費量とGHG排出量が、2030年の目標を達成したことから、夫々目標を引上げています。

KPIの実績は24頁の通りです。エネルギー消費量の削減は、新目標の△30%に対し△26.3%、GHG排出量は△42%に対し△36.2%となっており、引き続き新目標達成に向けて取り組んでいきます。グリーンビル認証については、物件入替等の要因もありますが、新規取得物件の認証取得等を通じ、目標水準以上を維持していきます。
以上踏まえまして、27頁以降で今後の戦略について説明致します。先ず、足元の分配金は3,480円水準を維持する一方、譲渡益等を除いた調整後のEPU水準は改善傾向にあり、19期実績同様、20期新予想も旧予想を上回る見込みです。これは、前期に掲げた諸施策のうち、手元資金による物件取得や稼働率の上昇等が寄与しています。21期の調整後EPU予想は3,300円としておりますが、今後も下段に記載の外部成長、内部成長等の取り組みを通じ、3,480円水準以上を目指していくこととしています。外部成長施策としては、前期実行状況も踏まえた、手元資金や借入金余力の活用による物件取得です。手元資金による物件取得で60億円、LTV2%相当の借入金151億円で、合計約150円のEPU効果となります。但し、物件取得とともに、譲渡も並行して実施していくことを想定していますので、その実施タイミングに応じ、LTV水準を一定のレンジで弾力的に運営していくことを想定しています。これらの施策によるEPU成長効果は、合計200円となり、21期(2024年8月期)の調整後EPU3,300円水準を、先ずは、3,480円水準に引き上げていくことを目指しています。又、2025年以降は、上場後10年が経過し、長期所有資産の買換特例の要件を充足しますので、分配金戦略上その活用も視野に入ることとなります。

28頁は、分配金戦略を推進するためのボートフォリオ戦略です。これまで、マーケット環境に適応しながら、資産規模の運営や資産構成と機動的なポートフォリオ運営を展開してきました。コロナ禍以降においては、安定性重視の資産入替を推進してきましたが、社会経済活動の正常化に伴い、今後は、安定性に加え、成長性の見込まれる資産への取り組みに注力していく方針です。具体的には、市場環境等も踏まえ、アセットタイプごとの当面のスタンスを表に記載の通り想定しています。先ず、オフィス一般については、稼働率の回復基調や賃料増額事例等の好材料もありますが、今後の需給や賃料動向等を見極めるべく、当面抑制的なスタンスを基本に考えております。但し、スポンサー開発物件等、立地の優位性やテナント安定性等が見極められる場合、厳選投資対応とする所存です。商業施設については、コロナ禍で保有比率を低下させてきており、基本は抑制スタンス継続を想定しています。業態により、コロナ禍以前への回復状況も異なることから、収益性やテナント特性等を勘案し、個別対応マターと考えています。有料老人ホームは、優良なオペレーターの運営する高価格帯施設は安定性が見込まれますが、固定賃料が前提となることから、取得に際しては、ウェアハウジングを活用する等収益性の確保を図りつつ、厳選投資を目指します。ホテルは、当面、最も成長性が期待できるアセットとして、足元の運用実績等を踏まえつつ、取得検討に注力する方針です。中長期的な運用の観点から、安定性をベースとしながら、成長性の確保を目指したいと考えています。以上の当面の投資スタンスを踏まえたポートフォリオ運営を念頭に、資産入替を含む外部成長、内部成長の諸施策を推進し、調整後EPUの向上を通じて、分配金の安定性と成長性の確保を目指してまいります。

以上で私からのご説明を終わります。