ジャパンリアルエステイト投資法人 2024年3月期決算概要
ジャパンリアルエステイト投資法人
2024年3月期(第45期)決算動画説明書&質疑応答
○動画
https://www.irwebcasting.com/20240516/1/95d4ba0370/mov/main/index.html
○説明資料
https://www.j-re.co.jp/file/term-3fa2e530a4d97b5a04989f0067a6a97d3f678391.pdf
〇質疑応答
https://www.j-re.co.jp/file/term-685ad0c570e13109ef2957853c9a09a2f6000b80.pdf
○説明者 ジャパンリアルエステイトアセットマネジメント株式会社
代表取締役社長 小島 正二郎
○説明
2020年3月期決算について説明申し上げます。
先ず3頁をご覧ください。初めに、当期の決算ハイライトと運用戦略についてです。
オフィスマーケットは、2023年の大量供給の波を受けながらも、緩やかな回復傾向にあります。こうした環境において、保有物件の賃貸収益改善に注目が集まっていると考えて、今回は内部成長戦略から説明を始めたいと思います。上段左側をご覧ください。内部成長の決算ハイライトです。当期末の入居率は96.6%でした。これは、前期である23年9月期末の95.0%から、1.6 ポイントの上昇です、賃料月額ベースで、テナント入れ替えによる変化は、+12百万円、賃料改定による変化は-1百万円となりました。詳しい内容は後ほど説明しますが、いずれの数字も改善傾向です。
次に右側上段、環境認識と運用戦略についてです。冒頭申し上げた通り、賃貸マーケットは、緩やかな回復傾向にある一方で、足元ではインフレの影響による費用の増加が表面化しています。こうした状況を踏まえた今後の運用戦略として、先ずは、賃貸収入向上に向けた取り組みを一層強化します。次にコスト管理です。コストの中でも特に工事費は、比較的コントロール余地の大きい項目ですので、その金額とタイミングの適正化を向上させます。同時に長期的な物件の競争力向上のためのバリューアップ工事にも、積極的に取り組んでまいります。続いて下段の外部成長です。先ず当期の実績として、3RD MINAMI AOYAMAを新規に取得しました。そして豊洲フォレシアとシーバンスS棟の持分を追加取得しています。譲渡については、晴海フロントの最終3回目の売却が完了しています。又、その下に参考として記載していますが、JRE堂島タワーを2期に分けて売却する契約を、去る3月7日に締結して、4月1日に第1回目の譲渡が完了しています。この一連の取引によって、長期的に競争力を発揮しうる都内の有料物件を取得した一方、今後の収益性に懸念のある物件の売却を進めることで、ポートフォリオ収益の安定性と成長性を高めることができたと考えています。これらの物件の詳細については、後ほどの頁で説明致します。
続いて下段右側、環境認識と運用戦略についてです。不動産売買市場は半年前から大きな変化はなく、引き続き堅調です。一方、近い将来に、調整局面を迎える可能性もあると考えています。前回の決算説明でも、海外資金の層が薄くなっている印象だとお話しましたが、その傾向は継続しているようです。今後は、マイナス金利解除による国内金利の先高感や、アメリカを中心とする海外オフィス不動産の価格調整の影響などを含めて、取引市場をより一層注意深く観察する必要があると考えています。こうした環境認識を踏まえた運用戦略です。基本的な考え方として、物件の取得と売却を組み合わせた資産入替を継続してまいります。その中で物件取得に関しては、引き続きスポンサーからのパイプラインを主軸とした厳選投資の方針です。他方で、比較的利回りの高い地方物件などの取得機会については、スポンサー以外のソーシングルートも活用してまいります。又、資産の売却については、JRE堂島タワー以降について既に検討を進めています。ポートフォリオ内の個々の物件の収益性や運用リスク、資産ボリューム、或いは、含み益などの要素を複合的に検証して、優先順位を整理しているところです。このような取り組みを通じて、ポートフォリの質を向上させるとともに、堅調な取引市場を背景とする売却益を、投資家の皆様に還元していく方針です。そして今後、より一層の外部成長が分配金の成長を目指すために、これは投資マーケットの動向次第ではありますが、公募増資による物件取得についても機会を模索したいと考えています。
次に4頁をご覧ください。一口当たり分配金、所謂、DPUの増減要因を説明します。4本の棒グラフが並んでいます。左の2本は前期である23年9月期と、当期である 24年3月期の実績です。当期の一口当たり分配金は12,216円となりました。そして右の色が少し薄くなっている2本は、将来の予算期である24年9月期と25年3月期を表しています。いずれの棒グラフでも下のグリーンの部分が、主に運用によって発生する賃貸事業収支ベースの分配金原資です。これをEPUと呼んでいます。そしてその上のブルーの部分が、物件売却益による分配金原資を表しています。左の2本の前期と当期は、晴海フロントの売却益です。そして右の2本、予想期のブルーの部分は、堂島タワーの売却益です。4本の棒グラフの間には、増減要因を表す短いバーがいくつかありますが、そのうち一番左の賃料共益費を左から右にご覧ください。バーの長さにはバラつきがありますけれども、全て緑で表されたプラスの数字です。空室の埋め戻しなどによって、賃貸収入が上昇基調となっていることを示しています。
次にその2つ右のバー、賃貸事業費用をご覧ください。その内数の修繕費に関して、当期では晴海フロントの3回目譲渡による売却益にぶつける形で、ある程度のボリュームの修繕を実行しました。予想2期についても、堂島タワーの売却益計上が確定していますので、計画工事の一部を前倒しで実施する予定です。賃貸事業費用のもう一つの内数である水道光熱費についてですが、昨年の後半以降、燃料費自体は安定して推移しています。ただ、この春以降の再エネ付加金の増加や、激変緩和措置の終了が決定していますので、それらのコスト上昇を織り込んでいます。又、支払い利息も金利上昇を反映して増加傾向です。以上の通り、費用に関しては、一部に我々の戦略的な理由によるものを含みますけれども、全体として増加傾向にあります。一方で、賃料共益費収入はそれを上回って増加していますので、修繕費の増加影響を除けば、EPU全体は概ねプラス基調にあると申し上げて良いと思います。
続いて5頁をご覧ください。25年9月期以降の分配金の考え方について説明します。前の頁でも話しました通り、一口当たり分配金であるDPUは、グリーンで示されたEPUと、ブルーで示された売却益による分配金原資で構成されていますけれども、ブルー部分の割合は、DPU全体の約2割を占めているのが現状です。この頁でお伝えしたいのは、将来に向けてDPUをできるだけ安定的に保ちながら、その中でのEPUの割合を少しずつ増加させていきたいということです。具体的には右側に記載していますけれども、安定的な配当の実現のために、当面は資産入替から生ずる売却益や内部留保を活用する方針です。そしてEPUを向上させるために必要なのは、先ずは賃貸収入の向上です。高い入居率の維持を目指しつつも、物件によっては強気に賃貸条件を追求することも織り交ぜながら、トップラインの最大化を目指します。長期的な競争力の向上という観点からは、共用部改修などの戦略的な追加投資にも取り組む必要がある一方で、コストマネジメントも重要な局面ですので、そのバランスを図りながら運用していきます。
続いて内部成長に関して、ポイントとなる箇所に絞って説明します。7頁をご覧ください。上段左側は入居率の推移です。冒頭で申し上げた通り、当期末の入居率は、前期から1.6 ポイント上昇の96.6%となりました。1棟借りテナントが退去した晴海フロントを、当期中に売却したことによる影響が大きいのですが、既存物件のリーシングが、想定より順調に進んだことも寄与しています。来期に向けては、地方を含めて一定の貸付が進むことを想定している一方で、一部の物件でやや規模感のある解約も予定されており、今期末の入居率は0.1ポイント低下の96.5%を予想しています。それから、右上のテナント入替率のグラフで、1点だけ説明します。グラフの右の方で、3本のグラフが枝分かれしてしまっていますけれども、これは晴海フロントのテナント退去が影響しています。東京23区を示す薄い緑色が、2022年10月以降上向きになっていますけれども、晴海フロントの退去がなければ、グレーのその他の都市と同じように下向きの軌跡になっていたはずです。少し目立つ部分ですので、ここだけ補足説明させて頂きました。
続いて8頁、賃料改定の推移です。上段左側のグラフをご覧ください。賃料改定についても改善傾向が見られます。前期は、増額と減額をネットした月額賃料ベースで-9百万円でした。つまり減額改定が増額改定を大きく上回っていたわけですけれども、当期はその差が縮まって-1百万円となっています。そして今の足元の状況を申し上げれば、あくまでその4月以降の1ヶ月余りの期間ですけれども、明らかに増額改定が減額改定を上回って進捗していますので、賃料改定は更に改善傾向にあると考えています。
続いて11頁をご覧ください。左側のグラフは、ポートフォリオ内の各ビルの査定賃料の変化を表しています。我々はCBREに依頼して、半年ごとにビル1棟単位のマーケット賃料水準を査定して頂いていますが、その時系列の推移です。棒グラフの一番右側が当期ですけれども、前回から更に賃料水準の上昇が増加している様子が現れています。次に右側の賃料ギャップについてです。賃料ギャップは、実際の契約賃料からマーケット査定賃料を引いた数値です。当期の賃料ギャップは+1.4%となっています。未だにマーケット賃料が実際の契約賃料を下回っている状況ではあります。そのギャップ幅は、2期連続で縮小しています。以上、説明しました状況から、JREの保有ビルにおける賃料水準は、1年前に底打ちをして、都心物件を中心に上向きの傾向が継続していると見ることができます。
続いて12頁をご覧ください。ここでは我々の修繕工事に対する取り組みについて説明したいと思います。この数年を振り返りますと、コロナ禍に見舞われてからは、工事資材の調達が困難になったことで、修繕計画に乱れが生じました。そしてその後は、工事費が上昇しましたので、こういった要因によって足元の修繕費用は増大傾向にあります。一方で今後は、オフィスビルの質による選別が一層進むと言われています。従いまして競争力の向上に繋がるバリューアップ工事や省エネ化工事にも、積極的に取り組む必要性が高まっています。こうした難しい環境に対処するために、我々は1年ほど前から社内でエンジニアリングチームの強化を図っておりまして、このチームを中心に、工事計画の適正化と積極的な改修投資への取り組みを進めていくところです。具体的には、個々の工事の内容精査によってコスト管理を徹底することや、売却益を見込める期に修繕費のピークを合わせるタイミング調整によって、収支をできるだけ平準化するといった工夫です。下段のグラフをご覧ください。右側の3つの期、つまり当期と将来予想の2期のバーが、それ以前の実績値に比べて高くなっていますけれども、これは売却益を意識した計画工事の前倒しが影響しています。つまり、このグラフの高さは、必ずしも今後の標準的な水準を示すものではありません。今後も売却益計上の有無や、その他の配当要因も意識しながら、修繕コストのマネジメントを行ってまいります。
続いて当期の取得物件と当期以降の譲渡物件についてです。先ず14頁をご覧ください。3RD MINAMI AOYAMAです。三菱地所から、77%持ち分を210億円で新規取得しました。2023年に竣工したばかりの新築物件です。写真でご覧頂けるように、少し特徴的なファサードですが、建物内部はワンフロア250坪の整形で、東西両方向に広い窓面を備えた、居心地の良いオフィスビルです。立地としては、最寄り駅である東京メトロ外苑前駅から徒歩4分です。青山通りに面して視認性も高い物件ですので、アパレルなどのファッション系やIT系などを含めて、幅広い業態からの安定的な需要が見込めます。そして渋谷駅まで2キロ弱ということもあって、需要が旺盛な渋谷エリアからの染み出しニーズの影響もあります。長期的に高い競争力を発揮しうる、非常に良い物件を取得できたと考えています。
続く15頁、16頁の豊洲フォレシア、シーバンスS棟については、既に持分保有している物件の追加取得となりますので、詳細の説明は割愛致します。
次に17頁をご覧ください。晴海フロントの売却については、過去の決算説明でも何度かお伝えしていますので、これも詳細は割愛させて頂きますが、前々期から3期に亘る分割譲渡の最終3回目の売却が、当期である 2024年1月に完了しています。
続いて18頁をご覧ください。当期以降の売却物件であるJRE堂島タワーについてです。本物件は、今期と来期の2期に亘って2分割で売却します。右側に本譲渡のポイントを纏めています。先ず1点目はリーシングリスクの回避です。大阪では、2024年に過去最大規模の新規供給が予定されています。その翌年の25年でも一定水準の供給が見込まれています。堂島タワーは、これまで比較的安定して稼働を維持してきましたけれども、2024年の新規供給は隣接する梅田エリアがメインですので、2次空室による影響を受ける可能性が高いと考えました。それから、本物件は、竣工30年を目前に控えて、設備更新の追加投資が嵩んでくるタイミングであることも考慮しました。2点目は、簿価と鑑定評価額を大きく上回る譲渡価格という点です。売却益は、2期合わせて132億円を計上できる見込みですが、この売却益は一部を内部留保した上で、今期と来期の2期に亘って、夫々40億円弱を配当の一部として投資家に分配致します。
続いて20頁をご覧ください。財務戦略です。当期も引き続き長期固定を中心とした借入という方針のもとで、一部、中期年限の固定や長期変動での借り入れも組み合わせた資金調達を行いました。その結果、有利子負債の平均利率は、前期の0.40%から僅かに上昇して0.44%、平均残存年数は4.39から4.32へと若干短期化しました。マイナス金利が解除されて、日銀による金融政策が正常化に向かう中で、国内金利は今後も上昇傾向が続くことが予想されます。従いましてこれまでの借入戦略を大きく変更することなく、長期固定での借り入れを中心としつつも、借入コスト上昇の影響と財務安全性とのバランスを意識しながら、柔軟な姿勢で資金調達を進めてまいります。
続いて21頁です。上段の折れ線グラフは、LTV水準を示していますけれども、当期の豊洲フォレシア、3RD MINAMI AOYAMAの取得に伴う借り入れによって、当期末時点のLTVは、簿価ベースで44.0%まで上昇しました。しかし、その後堂島タワーの2回目譲渡が行われる25年3月期末には、42.5%まで低下する見込みです。
少し飛ばして26頁をご覧ください。上段の含み益の前期比は、-1,800百万円となりました。これは晴海フロントの3回目譲渡に伴い、その含み益が剥落したことによるものです。この影響で、右下の一口当たりネット・アセット・バリューは、前期に比べて約400円低下しました。尚、晴海フロントを除いた既存物件の含み益は、全体で増加となっています。
次はESGです。28頁をご覧ください。我々は環境認証の取得率に関する目標を策定していますが、本年1月、この取得率の目標水準を引き上げました。従来の目標は、認証取得率 70%超の維持というものでしたが、上段グラフで示している通り、ポートフォリオのグリーン化に向けたこれまでの取り組みによって、既に継続して70%超を達成している状況です。そこで新たな目標として、取得率90%超の維持を目指すことにしました。次に下段の右側ですが、これは外部機関による調査事例の抜粋です。高いランクの環境認証ビルほど、賃料プレミアムが大きい傾向が示されています。入居者が、環境性能の高さや快適性、安全性といった要素を重視する傾向が高まっているのは、最近我々も強く感じているところです。JREがサステナビリティの向上に積極的に取り組んでいるということは、様々な機会でお伝えしていますけれども、そうした取り組みが、投資家の経済的利益とも整合しているということを、分かりやすく示した調査結果ですので今回紹介させて頂きました。
続いて29頁の下段をご覧ください。この4月に、当社ジャパンリアルステートアセットマネジメントの人事制度を、大幅に改定しました。当社は、資産運用会社として、投資家に信頼される高度な資産運用を継続的に提供するために、優秀な人材のリテンションを重要な経営課題と捉えています。その上で、これまでも人への投資に関する様々な取り組みを、実施してきました。今回の人事制度改定もその一環です。社員の評価プロセスの強化や、定年延長などによってエンゲージメントを高めて、長く働き続けられる制度を整備しました。この新制度によって、個々のメンバーの潜在力を最大限引き出して、それによって組織全体としての運用力が一層高まることを期待しています。
以上で資料に沿った一通りの説明とさせて頂きます。最後に、改めて現在の運用環境と今後の見通しについて、少し補足したいと思います。先ず金融環境についてです。金利動向は過去2年ほどに亘って、J-REITにとっての大きな不安要因でしたが、3月の日銀政策決定会合以降は、一旦の落ち着きを見せています。マイナス金利政策の解除とYCCの撤廃がついに確定したことに加えて、物価見通しが大きく変わらなかったことが影響したのだと思います。市場の不安感が緩和されたこと自体は喜ばしいですが、借入コストが上昇していることは間違いありませんので、調達に関しては、今まで以上に慎重に臨まなければなりません。次に賃貸市場ですが、これはこの数ヶ月で大きく好転しています。東京では2023年の大規模供給を上回る需要によって、空室率が下げ止まっただけではなく、最近では賃料の上昇も明確なトレンドとして確認されるようになりました。
2025年の新規供給に対する不安が消えたわけではありませんけれども、今のような需要が継続すれば、2023年と同様に、供給が市場で吸収されるシナリオは十分にあり得ると思います。一方で、再びコロナ前のような99%入居率のマーケットは暫く戻ってきませんので、今後はオフィスの質による選別が、日本でも本格化するはずです。そしてインフレがある世界に移行していきますので、運営コストは上昇します。そういった環境下で、運用会社によるビルの価値を維持・向上させる技量がますます重要になるはずです。そして、引き続き注意しなければならないのは売買市場です。金融環境を初めとするファンダメンタルズの不透明さにもかかわらず、不動産の価格は安定的に高いものです。特にキャップレートが全く上昇していないのは、少し説明の難しい点です。従いまして、売買市場の調整局面を想定しておくことは必要だと考えます。以上のような事業環境の認識に基づいて、JREとしては、先ずは着実な内部成長を目指しています。その上で資金調達に関しては、今までと同様に柔軟さと慎重さを持って臨みつつ、外部成長戦略としては、引き続き戦略的な資産入替を心掛けてまいります。
私からの説明は以上です。有難うございました。