KDX不動産投資法人 2024年4月期決算概要

KDX不動産投資法人
2024年4月期(第38期)決算動画説明書
○動画  https://www.net-presentations.com/8972/20240618/sfreyrte5463/
○説明資料
https://www.kdx-reit.com/file/top-6c2fb62faf8a9cfa6a2adbf36e24d9dd2d17a4e7.pdf
○説明者 KDX不動産投資法人 執行役員 桃井 洋聡
○説明 
昨年11月1日付で新たに誕生した本投資法人にとっては、合併後初の決算となる2024年4月期の決算、並びに、10月期以降の収益予想、足元での運用状況について説明させて頂きます。
4頁をご覧ください。当期の運用サマリーです。先ず外部成長ですが、総合型リートに転換した結果、合併時に申し上げた、投資対象センターを跨ぐ資産入替を実現し、オフィスビル3物件を譲渡し、居住用施設や商業施設、宿泊施設や物流施設といった、多岐に亘る用途の資産7物件を取得する、大規模な資産入替を行うことができました。

又、18日付で更なる資産入替を発表しており、戦略的に積み増しを表明している宿泊施設の保有比率は、当初の0.4%から資産入替完了後には4.1%まで拡大する見込みです。一連の資産入替は、後ほどご紹介する分配金水準の成長にもしっかりと結びついています。内部成長についてですが、オフィスビル、居住用施設、生活密着型商業施設等、合併前の各々の特化型リートにおいて、現場に近い運用を心がける中で、蓄積してきた豊富な運用ノウハウを生かし、稼働率を高水準で維持しながら、ポートフォリオの大半を占めるこれらアセットで、新規契約や更新時の賃料の引き上げを実現しています。

財務戦略、資本政策では、金融政策の変更による金利コストの上昇を視野に入れ、引き続き借入金の長期固定化を推し進めています。又、投資口価格の状況を適切に捉え、機動的かつ大規模な自己投資口の取得と償却を行い、投資主の皆様への還元策としています。サステナビリティについてですが、重要な経営課題の一つであるとの認識のもと、GHG排出量削減目標達成に向け、環境面を中心にケネディクスグループの総力を結集して取り組みを進めています。

5頁をご覧ください。本年3月から4月にかけて、J-REITとしては最大規模となる、総額100億円に上る自己投資口の取得を機動的に実施しました。取得を決定した3月には、投資口価格の水準が年初来安値をつけるなど、どちらかといえば、需給の観点から好調な運用状況とは乖離した値動きを見せ、かなり割安な水準であったことから実施を決めました。取得した投資口は、全て24年4月期末に償却し、発行済み投資口総数が減少した分、当期の一口当たり分配金は1.6%上昇しています。今後も物件譲渡で獲得した資金などを活用し、投資口価格の水準などを勘案しながら、自己投資の取得を検討していく方針です。

7頁をご覧ください。24年4月期の決算概要です。先ず、左側A列が前期の決算発表時である、23年12月時点における予想数値、右側B列が実績値となります。営業収益ですが、既存物件の増収、特に居住用施設における収入増加が顕著ですが、これに加えて24年1月以降に取得した4物件が大きく寄与し、422百万円の上振れとなりました。更に営業費用については、水道光熱費の低下や修繕費の圧縮により175百万円改善しています。当期は負ののれん発生益を、特別利益として173億円強を計上していますので、当期純利益が一時的に大きく増加しています。このため特別利益を除いたベースで当期純利益を比較すると、526百万円の増益となります。当期に取得した自己投資口は、4月末に全口償却したため、発行済総数が減少しています。資料に記載の内部留保の繰入額は、負ののれんの繰入額等から、圧縮積立金の取り崩し額を控除した金額を記載しているのですが、当期は11億円を取り崩しており、結果、一口当たり分配金は127円の増加となる3,927円となりました。又、一口当たりNAVについても182,000円と着実に成長しています。

8頁をご覧ください。先ず、今走っている24年10月期の予想、左から2つ目のB列をご覧ください。24年1月以降に取得した物件の通期寄与と、18日付で発表した10月期の資産入替等により、前期比で695百万円の賃貸事業収益の増加を見込む一方で、当期の不動産等売却益が、前期に計上した売却益の金額に及ばないことと、有価証券売却益の剥落により、733百万円ほどが減収要因となり、営業収益としては53百万円の減収を見込んでいます。一方、営業費用においては、一部費用の増加があるものの、合併関連費用が剥落することなどから、1,726百万円の改善を見込んでいます。前期は、負ののれん発生益を特別利益として計上しているため、当期純利益は一時的に増加していることから、大幅な減益のように見えますが、特殊要因を除いたベースで比較すると、1,525百万円の増益となる見込みです。

当期においては、売却益1.309百万円全額を内部留保に繰り入れる一方、これまで積み立ててきた内部留保600百万円と一時差異等調整積立金、所謂、RTA の145百万円の毎期定額の取り崩しにより、内部留保は差し引き563百万円の繰入を見込んでおり、結果、一口当たり分配金は、前期比3円の微減となる3,924円を予想しています。次に4月期の予想ですが、右隣のC列となります。収益面では前期の物件譲渡や季節要因による宿泊施設収入の減少等のマイナスインパクトを、取得物件の収入寄与や既存物件の埋め戻しなどによる収入の回復でカバーする予想を立てているものの、水道光熱費収入の季節要因による減少などに加え、前期計上した売却益の剥落が1,309百万円あり、前期比では1,513百万円の減収を見込んでいます。費用面では、季節要因により、水道光熱費の支払いも相応に減少することなどから、229百万円の改善を見込んでいますが、売却益の剥落が大きく影響し、当期純利益は1,270百万円の減益を見込んでいます。

当期も前期と同様、内部留保とRTA の取り崩しを同額行う予定で、一口当たり分配金は3,934円となることを見込んでいます。前期比で減益となる予想ではありますが、これは前期に全額を圧縮積立金に繰り入れた、売却益の剥落が主因であり、この影響を除くと利益水準はしっかりと伸びる予想としているため、一口当たり分配金は10円増加しています。 
9頁をご覧ください。合併による負ののれん発生益は173億円となりました。この負ののれん発生益は、RTAとして145億円、利益剰余金として28億円を計上します。又、圧縮積立金は24年10月期末で49億円となる見込みです。これらの内部留保は、一時的な収入の減少や費用の増加などで、分配金が大きく変動する可能性がある場合など、積極的に活用しながら分配金の安定化を図る方針です。

10頁をご覧ください。一口当たり分配金の予想を、一口当たり純利益、所謂、EPUと内部留保の取り崩しによる部分とがわかるように記載をしています。24年4月期のEPUの実績は、積極的な外部成長に加え、内部成長による効果と自己投資口の取得により、予想比で+184円、5.2%の大幅な増加となりました。EPUをしっかりと伸ばしながら内部留保の取り崩しも行い、一口当たり分配金、所謂、DPUも3,927円と127円増加しています。真ん中の24年10月期の予想ですが、本日公表した資産入替効果などにより、EPUは+127円、3.5%の増加、DPUは3,924円と、こちらもベースとなる利益水準を伸ばしながら、増配となる予想としています。従来から申し上げている通り、環境変化に対応した柔軟な運用を心がけており、外部成長一本槍ではなく、内部成長の実績もしっかりと積み上げ、自己投資口の取得など資本政策をバランスよく行いながら、利益水準を引き上げ、巡航DPU目標4,000円の早期達成を目指します。

12頁をご覧ください。24年4月期と10月期における資産入替です。含み益のあるオフィスビルを譲渡し、売却益を確保する一方で、ケネディクスグループの高いソーシング力を背景とした、多様な用途の資産を合計656億円取得します。6月28日に譲渡するKDX日本橋313ビルについては、築古のため自分達で建て替えることも検討しましたが、様々な事業リスクを考慮し、スポンサーへ譲渡することにしました。スポンサーは、再開発を前提としていますので、完成後の物件取得に向けた優先交渉権を保持する形での譲渡となります。
13頁をご覧ください。資産規模では12,000億円台が見えてきました。保有物件数や立地面等高水準で分散、細分化が進んでいますので、収益の変動リスクが相対的に抑えられた、安定したポートフォリオが構築できています。数多くのJ-REITの中でも、この点は差別化のポイントとなる我々の強みです。

14頁をご覧ください。今後の我々の方針です。現状J-REITの投資口価格が、全体的に軟調な要因の一つは、日本やグローバルでの金融政策の動向にあると考えています。これまでとは異のなり、事業環境が目まぐるしく変化する中で、金利や投資口価格の水準、我々のパイプラインの状況などをしっかりと認識しながら、環境変化に即した柔軟な行動がいつでも取れるよう、様々な選択肢を確保しておくことが何よりも大事なことだと思います。業績に大きな影響を及ぼすような金利環境の変化が、すぐにも到来するようなことは想定しづらいですが、物件譲渡を中心に資金を確保しながら、ポートフォリオの質の改善を目的とした資産入替や、LTV水準45%程度を意識したコントロール、自己投資口取得など資本政策を場面、場面で適切に組み合わせながら、投資主価値の向上を目指していきたいと考えています。

16頁をご覧ください。オフィスビルは引き続き稼働が安定し、足元では賃料の増額改定も 進捗しています。又、マーケット賃料も底を打ち、レントギャップも再び拡大していることから、競争力の高い物件を中心に、積極的に賃料を引き上げていきたいと考えています。又、賃貸住宅市場も引き続き良好な状況が続いていますので、ファミリータイプを中心に、居住用施設においても賃料の引き上げが可能な状況です。商業施設についても、新規契約や契約更改時の賃料引上げや、売上増加による歩合賃料の増加が期待できそうです。又、新規に取得した宿泊施設2物件の賃料体系は、変動賃料型となりますので、今後の観光需要増大による客室単価の上昇なども期待が持てます。賃料ベースでは、これら4つの用途で91%を超えますので、分配金成長の原動力の一つとして、内部成長を最大化するべく取り組みます。

17頁をご覧ください。ここからは各用途別資産の運用状況となります。先ずはオフィスビルの状況です。24年4月期末の稼働率は、前期末と同水準98.2%で着地しました。今走っている24年10月期の退去率は3%程度と予想していますが、期の前半の退去面積が大きいこともあり、賃料ベースでの稼働率、所謂、実質稼働率は94.8%に低下する見込みです。しっかりと埋め戻しが可能な状況に変わりはありませんので、契約ベースでの稼働率については、引き続き97%から98%程度で推移するものと考えています。フリーレント期間については、募集する物件の立地やグレードなどに左右される側面もあるため、数字にばらつきはありますが、大きな傾向感としては、これまでと変わらず一進一退というところです。

18頁をご覧下さい。入替時の増減額は、退去したテナントのレントギャップの状況次第で、新規テナントの賃料が増加することもあれば減少することもあるので、大きな傾向感は変わらず、賃料の純増額は0付近の水準で引き続き推移しています。一方で、右上のマーケット賃料の動向ですが、依然として保有物件の大部分では、マーケット賃料が横這いの状況ですが、上昇が12件と大きく増えています。この結果、毎期一定程度での増額改定ができていることや、テナント入替により縮小傾向が続いていたレントギャップが、わずかではありますが再び拡大していますので、マーケット動向を注視しながら、競争力の高い物件を中心に、賃料増加に向けた取り組みを評価していきたいと考えています。

19頁をご覧ください。上段のパイチャートですが、当期の賃料増額改正は、安定した運用を背景、件数および面積割合ともに前期と比べ増加しました。左下の改訂時の賃料増減のグラフでも、折れ線グラフが示すように、増加額から減少額を差し引いた純増額の伸びが顕著です。右下の増額改定件数の棒グラフの内訳を見ると、都心5区以外の増額件数が多く、なかでも地方物件の増額改定が全体を牽引している状況です。マーケット賃料が上昇している物件の中には、都心部の物件も含まれていますので、都心でも増額改定の底上げに向けて、粘り強い交渉を続けていきたいと思います。

20頁をご覧ください。ここからは居住用施設の運用状況です。先ず稼働率についてですが、季節要因により4月末に向けて稼働率が一時的に低下しているように見えますが、分譲価格の高止まりや都市部への人口回帰等を背景に、需要は引き続き安定しており、24年4月期中平均稼働率97.3%と高い水準を維持しています。

21頁をご覧ください。引き続き良好なマーケット環境の下、新規契約時には積極的に賃料単価を引き上げており、右上のグラフの通り、足元では65%以上の契約で賃料が上昇しています。右下のタイプ別の増減率を見ると、やはり分譲価格の高騰などで、持ち家が持てない層の需要が大きく牽引しているファミリータイプで+6.7%と、引き続き高い増減率を維持しており、増額したものだけを見る8.8%と大きく伸びています。尚、スモールファミリーやシングル向けの住戸についても上昇トレンドは続いています。

22頁をご覧ください。更新時における賃料増額交渉のハードルが高い居住用施設においても、一定の増額改定に成功しています。普通借家家契約かつ個人の入居者が中心のため簡単ではありませんが、周辺マーケットの動向や物件競争力、新規賃料の水準などを睨みながら、著しく賃料水準に乖離がある場合には、適切な賃料での更改を積極的に働きかけていきたいと思います。

23頁をご覧ください。ここからは商業施設の運用状況です。当期については、退去が入居を少し上回り、稼働率としては若干低下していますが、99.3%と引き続き安定した状況が続いています。又、右上の棒グラフですが、当期は新規契約時に全てのテナントで月額賃料が増額となり、入替時の賃料は、居住用施設とともにプラスを確保することができました。下段の左右2つの棒グラフですが、24年4月期の一定数の定期借家契約テナントが満期を迎えましたが、3割以上のテナントで賃料が増額となり、増減額をネットした純増額も、プラスで月額140万円程度を維持するなど、業績好調なテナントを中心に、賃料を引き上げて再契約ができています。今後も満期を迎える定期借家契約のテナントとの再契約交渉が、コンスタントにありますので、賃料を引き上げての再契約による、内部成長の実現が期待できます。

24頁をご覧ください。上段は、昨年対比の売上推移ですが、2022年のコロナ禍との比較における、反動増ほどの大きな伸びはありませんが、引き続き前年を超える水準で推移しています。右側にある通り、保有する商業施設は、食品スーパーを核とする生活密着型商業施設が中心ですので、比較的e-Commerceによる影響も受けにくいのが特徴です。下段になりますが、再び金利が付き、物価も上がっていく環境が到来しようとしていますので、当面は固定賃料の割合に配慮しながらも、新規契約や更新時の歩合賃料形態の導入や、金利やCPI に賃料を連動させた契約への切り替えを、積極的に働きかけていきたいと思います。

25頁をご覧ください。宿泊施設については、首都圏の3物件に加え、新たに沖縄と大阪の物件を取得し、全体で5物件となりました。観光需要の回復とともに、稼働率やADRは順調に回復し、改善が進んでいます。宿泊施設を成長資産と位置づけていますが、今後も観光需要の成長は続くものと考えており、変動型賃料形態の物件を中心に、引き続き積極的に取得していきたいと考えています。

26頁をご覧ください。左側が物流施設についてです。長期契約が主体ですが、今後3年以内に満期を迎える契約が46.3%あります。これらについては、更新時の積極的な賃料を引き上げや、CPI、金利連動型契約への切り替え、場合によっては、テナントの入替を検討するなど、収益の増加に繋げます。右側はヘルスケア施設の状況です。こちらは残存期間が10年以上の契約が大半を占めていますので、長期に亘り安定的なキャッシュフローが期待されます。ヘルスケア施設でも、入居者満足度の向上に繋がるようなリニューアル工事を実施することで、賃料増加に結びつくケースもありますので、工夫を重ねながらの収益性向上にも取り組みます。

27頁をご覧ください。アクティブ運用の実例をご紹介しています。左側のアシコタウンあしかがの事例では、未消化容積を活用するため、駐車場の一部に飲食店等の増築を進めており、収益の増加を見込んでいます。又、右側、リバーシティ21の事例では、経年により陳腐化した居室内を、リノベーションした上で貸し出すことで、賃料単価を大きく引き上げて契約に結びつけています。空き室が出る都度、こうした取り組みを行っていきますので、まだまだ賃料上昇が期待できます。

29頁をご覧ください。財務の状況についてです。緩和的な金融政策の修正が見込まれる中、今後の一段の金利上昇に備え、当期は引き続き借入金の長期固定化を推し進めました。足元ベースレートが上昇しているため、負債コストは多少上がっていますが、同時に信用力の向上によりスプレッドの引き下げも実現しており、金利コスト上昇による影響を抑えることができています。急速、急激な金利の上昇は想定していませんが、現状、一定の範囲内での金利コストも増加については、借入れ条件の改善や内部成長等により、吸収することが可能と考えています。

30頁をご覧下さい。LTVは総資産ベース44%、鑑定評価額を考慮した時価ベースで40%、総資産ベースのLTV45%を基準とした場合の取得余力は、190億円となります。38社に上る金融機関との関係性は、極めて良好ですが、物件譲渡により確保した資金を、一部借入金の返済に充てることなども検討しながら、LTVの水準をコントロールしていく方針です。

32頁をご覧ください。環境への取り組みにおいて掲げている目標について、外部認証の取得率を前期までは60%以上としていましたが、24年4月期中に達成しましたので、80%以上へと目標を引き上げました。又、グループ会社であるケネディクスグリーンエナジー社からのものを中心に、再生可能エネルギー由来の電力への切り替えも順次進めており、GHG排出量の削減目標達成に向けて、着実に歩を進めています。

33頁をご覧ください。従業員も含めた、様々なステークホルダーの皆様に向けた取り組みも多様化しており、持続可能な社会の実現を目指して積極的な試みも導入しています。環境変化に対応したガバナンス体制の見直しも適切に行いながら、皆様に信頼される運用体制を構築していきます。

以上がKDX不動産投資法人の決算説明となります。運用面では、合併後の出だしとしては、順調な滑り出しをお見せすることができたのではないかと考えていますが、金融環境の変化に対する懸念などを払拭できず、投資口価格の水準は残念ながら期待水準を超えていません。投資運用戦略の柔軟性こそが我々の最大の強みと認識していますので、外部成長や内部成長、財務コストの抑制に加え、積極的な資本政策などを総動員しながら、投資主利益に資する運用を心がけて参りたいと考えています。
引き続きのご支援をお願い申し上げます。