ヘルスケア&メディカル投資法人 2024年7月期決算概要

ヘルスケア&メディカル投資法人
2024年7月期(第19期)決算動画説明書
○動画  https://www.video-streaming.net/ir/3455/2024_07_19/
○説明資料
https://hcm3455.co.jp/file/term-f65fda5d53cae2cbc2750ba77686e0f91dd56788.pdf
○説明者 ヘルスケアアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長 石原 久稔
○説明
私はスポンサーの1社である三井住友銀行において、20年以上にわたり証券化業務、信託業務に携わり、昨年4月に当社に着任し、本年7月1日付けで代表取締役社長に就任致しました。当社が創業以来掲げている、介護医療業界と資本市場を繋ぐパイプの役割を担うことで、国民一人ひとりが安心して、生き生きと生活できる社会の実現を目指すという投資 理念を大切にしながら発展させて参りたいと考えていますので、何卒宜しくお願い申し上げます。さてHCMは、J-REIT唯一のヘルスケア専業リートとして、2015年3月の上場来、厳選したオペレーターが運営する高齢者施設や病院不動産に継続的に投資し、その安定的な運用に注力しています。本日は、HMCの2024年7月期(第19期)の決算ならびに第20期、第21期の業績予想、そして足元のマーケット環境に即した運用戦略や、ESGの取り組み状況について説明させて頂きます。どうぞ宜しくお願い致します。

それでは資料の2頁をご覧ください。第19期のハイライトです。先ず、業績面です。期初に既存のパイプラインの中から5物件を取得し、営業収益は、前期比76百万円増加しました。費用面においては、修繕費予算が一部未消化となっています。これらの結果、一口当たり分配金は3,261円と、前期比では26円増加しました。又、一口当たりNAVは137,706円で、7期連続の上昇となりました。次に運用状況です。期末時点の資産規模は、53 物件816億円まで拡大しました。又、本投資法人としては初めてとなりますが、3月に匿名組合出資持分の取得を行っています。鑑定評価額の上昇に伴い含み益は120億円となり、含み利益率は15.0%に拡大しました。ポートフォリオの稼働率は、当期中も100%を維持し、テナントの解約や賃料の減額、支払い猶予はありませんでした。

財務状況ですが、期初に、物件取得資金として、25億円を新たに借り入れました。更に3月に、既存の短期借入金20億円のリファイナンスを実施し、期間の長期化および金利の固定化を実施しました。日本銀行の政策変更による金利上昇も想定されたため、本件、リファイナンスに際しては、従来の基本方針に基づき、借入金の長期固定化を実施しています。尚、LTVについては、引き続き50%を目処にコントロールします。JCRの長期発行体格付けはA+で変更ありません。

3頁です。HCMは、これまで3度の公募増資と、適切な時期における物件取得で成長を続けてきました。この度、新たに5物件を取得した結果、資産規模は53物件816億円まで拡大しています。
4頁です。こちらが期初に取得した物件の紹介になります。既存のパイプラインの中から北海道と大阪の高齢者施設、合わせて5物件を取得しました。取得価格は総額23.9億円で、鑑定評価額の約95%、平均鑑定NOI利回りは5.5%で、既存ポートフォリオと同水準です。又、新たに開発された有料老人ホームを裏付け資産とする、匿名組合出資持分を取得しました。出資金額は約1億円ですが、HCMとしては、本物件の将来的な取得に向けた優先交渉権を獲得するとともに、匿名組合出資者としてのリターンも見込めます。

5および6頁に記載の、ノアガーデンA館とB館、別邸とブルームビューは、北海道最大手のノアコンチェルが運営する、住宅型有料老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅です。これら4物件は同一敷地内にあって、それぞれが廊下で接続され、併設の定期巡回・随時対応型訪問介護看護事業所、訪問看護ステーション、デイサービスとともに、実質的に一体運営されています。24時間対応の介護サービスとリーズナブルな料金設定、設備面では、天然温泉付きの大浴場が特徴です。スポンサー等が組成したヘルスケアファンドから、4物件、合わせて17億円で取得しました。

7頁のPDハウス東大阪は、パーキンソン病のケアに特化した住宅型有料老人ホームです。オペレーターのサンウェルズは、パーキンソン病専門ホームPDハウスを中心に、首都圏、近畿圏、そして地元の石川県などで42施設を展開している介護事業者で、東証プライム市場に上場しています。本施設は、訪問介護事業所と訪問看護ステーションを併設し、又、大規模な機能回復訓練室を設置しています。専門医監修によるリハビリプログラムを提供し、神経内科専門の医師による訪問診療・服薬管理を始めとする、24時間体制の訪問看護といったきめ細やかなサービスと、パーキンソン病のケアに特化した設備使用が特徴です。2022年7月の開設以来順調に入居が進み、現在は90%以上の高い入居率となっています。本物件は、デベロッパーによる開発の出口を捉え、スポンサー以外のウエアハウジング機能を活用して7億円で取得しました。

続いて8頁、財務状況です。日本銀行の金融政策の変更に伴い、資金調達における金利は大きく変動しています。当社としては、その金利動向に留意しながら、中長期的な財務の健全性を確保するため、従来の長期固定による資金調達を維持しました。一方で、金利固定化には相応のコストも必要となりますので、分配金への影響を考慮しながら、バランスの取れた財務運営を行っていく方針です。第19期末時点の有利子負債は総額416.5億円、平均残存期間は3.0年、LTVは総資産ベースで49.9%、時価ベースで43.6%となっています。

それでは、決算の中身をもう少し詳しく見てまいります。11頁をご覧ください。A列が前期(第18期)の実績、B列が今年3月に公表した第19期の予想、そしてその右のC列が第19期の実績値です。第19期は、5物件取得により営業収益は2,514百万円と、前期対比で増加しました。費用面では、資産規模の拡大に伴い、賃貸事業費用が増加したほか、物件取得のための新規借り入れおよび前期リファイナンス時の金利上昇で、金融コストが増加しました。予想との比較では、修繕費の予算未消化等で営業費用が減少しています。これらの結果、当期純利益は1,054百万円、一口当たり分配金は3,261円と、前期比26円の増配とさせて頂きました。

12頁は、第19期の分配金の増減をブレイクダウンしたものです。第18期実績比では、5物件取得により101円ほど増加、既保有物件の賃貸事業費用やリファイナンスによる費用の増加はありますが、それらをトップライン収益の増強でカバーしており、結果として分配金は増加しています。

13頁です。B列が今年3月に公表済みの第20期の前回業績予想、C列が今回公表する新しい予想値です。先ず、営業収益ですが、匿名組合出資による配当収入で、前期比100万円の増収を計画しています。一方、費用面では、減価償却費や資産運用報酬の増加に加えて、当期に開催予定の投資主総会にかかる費用や、支払い利息等の増加を見込んでいます。これらの結果、当期純利益は、前期比32百万円の減益、一口当たり分配金は、前回の予想と同額となる3,175円を計画しています。D列は今回新たに公表する第21期の業績予想となります。あくまで新たな資産の取得や売却がないという前提で、営業収益は横這い、費用面では、固都税の増加に加えて、リファイナンスによる支払い利息等の増加を見込んでいます。これらの結果、一口当たり分配金は、現時点では3,140円を予想しています。

14頁は第20期ならびに第21期の予想分配金の増減のブレイクダウンです。投資主総会 関連費用等の一時的な支出を除くと、資産規模拡大に伴う費用の増加および金融コストの増加が分配金を押し下げる要因となっています。当社としては、物件の組み入れによるトップライン収益の増強、金利環境に即した柔軟な資金調達、そして各種経費の更なる見直し等により、分配金の引き上げを目指してまいります。
15頁です。グラフの通り、一口当たりNAVは堅調に推移しています。引き続き中長期的に安定的な分配とNAVの伸長を目指してまいります。

次に16頁、ポートフォリオの運用状況です。こちらに第19期末の主なデータを示しています。資産規模は53物件816億円に拡大、平均鑑定NOI利回りは5.5%、3大都市圏比率は81.4%と、引き続き高い水準を維持しています。

18頁は継続鑑定評価の概要です。第19期末時点の鑑定評価額の合計は922億円、前期末時点と比較して同じ48 物件で2億円上昇しました。個々に見ると、48 物件中8 物件で上昇した一方、7物件で下落しました。下落した主な要因は、固都税の上昇や茲許の物価上昇を反映して、CAPEX等が見直しされたことによるものです。尚、CAP-Rateは3物件で10ベーシスポイント低下し、一方で上昇した物件はゼロでした。
19頁です。鑑定評価額の上昇に伴い、ポートフォリオの含み益は着実に拡大しています。第19期末時点の含み益は120億円で、含み益率は15.0%となりました。

20頁をご覧ください。HCMの大きな特徴の一つは、長期安定的なCash-Flowです。私どもは、きめ目細かな事業デューデリおよび継続的なモニタリングを通じて、オペレーターならびに施設の運営状況をしっかりと見極め、安定的なポートフォリオの構築に努めています。事業デューデリに際しては、オペレーターの業歴・業容や財務内容、事業モデルはもとより、コンプライアンス面の取り組み、人材の採用・育成方針、ICT化をはじめ業務の効率化に向けた施策などについても、経営陣や施設長等との定期的な面談を通じて確認しています。当社では社内に専門部署を設置し、こうした事業デューデリやモニタリングのほか、ヘルスケア業界の調査・分析などを行っています。HCMが現在保有する物件のオペレーターは、全部で17社です。シェア別では、スポンサーのシップヘルスケアグループのグリーンライフおよびグリーンライフ東日本が合わせて23.2%でトップ、これに業界大手の損保ケアやベネッセスタイルケアが続きます。

医療法人共和会は、HCMの中核物件の一つである千里中央病院のオペレーターです。HCMが対象としているのは、必ずしも全国展開している有名大手ばかりではありません。規模が小さくてもしっかりとしたビジョンを持ち、特徴あるビジネスモデルを持って、地域で高いプレゼンスを発揮しているオペレーターは少なくありません。そのような優良なオペレーターを見出し、紹介することも専業リートとしてのHCMの役割と考えています。HCMは、オペレーターとの間で、原則、賃料固定、長期の賃貸借契約を結んでいます。2024年7月時点で、オペレーターとの契約は全て固定賃料で、契約の平均残存期間は11.5年です。契約期限が2025年9月までに到来するのは、まどか南浦和とSOMPOケアそんぽの家狭山の2施設です。両施設とも安定稼働しており、現時点では現契約の規定に従い、3年間の自動更新となる見込みです。

又、21頁の通り、実際の賃貸面積を賃貸可能面積で割り算した稼働率は、上場来、概ね100%を維持しています。個々の施設の入居率も、平均90%前後で安定的に推移しています。尚、茲許の急激な物価上昇による、オペレーターの業績への影響についてですか、現状HCMのポートフォリオにおいて、事業収支や賃料負担力も含めて特段懸念が生じているオペレーターや施設はございません。
続いて23頁、財務状況です。スポンサーの三井住友銀行を中心としたバンクフォーメーションを維持しつつ、借入先の分散も検討してまいります。直近の取り組み状況ですが、第19期の期初に、物件取得資金として25億円の新規借り入れを行い、3月に既存の短期借入金 20億円のリファイナンスを実施し、借入期間を長期化しました。いずれもソーシャルローンによる調達で、長期固定化、期限の分散といった従来の方針を継続しました。又、銀行団に、新たにあおぞら銀行が加わり、借入先は全部で16社になりました。

次は外部成長の取り組みです。25頁をご覧ください。現在のヘルスケア不動産の投資市場ですが、国内外のファンドや一般の事業会社等の新規参入もあり投資需要は旺盛です。金利上昇によるCAP-Rateの上昇は見られません。こうした状況下、当社はこれまで通り、多様なスポンサーサポートならびに広範なネットワークを活用して、優良なパイプラインの拡充に努めてまいります。あくまで、中長期的な収益力や分配金の持続的な成長を重視し、投資目線や利回り目線をいたずらに引き下げるようなことは考えていません。他方、投資対象としては、例えば賃貸住宅や商業店舗など、ヘルスケア関連以外のテナントも入った複合施設や、医薬品等の研究開発設備を備えたライフサイエンス施設なども、広義のヘルスケア関連施設として柔軟に検討してまいります。

又、ただ単に、マーケットから物件を直接取得するのは容易ではないという環境認識のもと、外部のリース会社やデベロッパーとの共同、ブリッジファンドへの匿名組合出資の活用等、取得手法の多様化を図ってまいります。時点で HCMが有するパイプラインの規模は、約300億円に上ります。資金調達環境や物件の稼働状況に留意しつつ、適時・適切なタイミングでの組み入れを目指してまいります。尚、HCMでは第16期に資産の入れ替えを実施しています。資産規模の拡大を優先しつつも、経年劣化やCAPEXの増大等により、収益性の低下が懸念される資産については、今後も戦略的な入替を検討してまいります。
次にESGの取り組みです。29頁をご覧ください。当社は、ESG委員会を設置し、全社を挙げてESGの取り組みを推進する体制を構築しています。HCMは投資理念に掲げている通り、社会インフラともいえるヘルスケア施設の整備・拡充を支援し、国民一人一人が安心して、いきいきと生活できる社会の実現を目指しています。ESGやSDGsとは親和性が高いと考えています。


30頁は最近のトピックスです。環境面では、当社では2022年からGRESBに参加しています。2年目となる昨年は、リアルエステイト評価で2-Stars、又、開示評価では、2年連続で最上位のAレベルを獲得しました。又、気候変動関連では、本年1月にTCFD提言に基づく開示を実施しました。次にソーシャル面です。HCMは、創業当初からポジティブな社会的成果を生み出すインパクト投資を行ってきました。その資金調達であることを明確にするため、ソーシャルファイナンス・フレームワークを制定し、JCRから最上位の総合評価であるSocial-1を取得しています。2024年のリファイナンスと新規借入をソーシャルローンで行ったことで、HCMの有利子負債は、全てソーシャルファイナンスによる調達となりました。尚、調達した資金の運用状況については、他のESGの取り組み状況とともに、毎年6月に発行するインパクトレポートにて開示していますので、是非ご覧頂ければ幸いです。ガバナンス面では、当社では自律的なコンプライアンス意識の醸成を目的として、定期的にコンプライアンス勉強会を実施しています。これには、私自身や常勤取締役を含む全役職員が参加しています。

本日の私からの説明は以上になります。
不動産価格の高止まりや長期金利の上昇、介護協会におけるM&Aと再編など、HCMを取り巻く環境は大きく変化しつつあります。私どもとしては、これからも、専業リートならではの目利き力を生かした、優良なヘルスケア施設への投資を通じてトップライン収益の状況を図るとともに、コスト面の見直しも随時行いながら、安定的な分配金を目指してまいります。今後ともご指導、ご鞭撻賜りたく、宜しくお願い申し上げます。
本日は、ご視聴有難うございました。