ジャパンリアルエステイト投資法人 2023年9月期決算概要

ジャパンリアルエステイト投資法人
2023年9月期(第44期)決算動画説明書
○動画  https://www.irwebcasting.com/20231116/1/85cff9a9cf/mov/main/index.html
○説明資料
https://www.j-re.co.jp/file/term-6b00ee11fab9f14cf6a346e444f199c24fef83f1.pdf
〇質疑応答
https://www.j-re.co.jp/file/term-1aff2de4cb58b4534b60e94c27ba16208af2fd9d.pdf
○説明者 ジャパンリアルエステイトアセットマネジメント株式会社
代表取締役社長 小島 正二郎
○説明 
ジャパンリアル ステイイ投資法人の2023年9月期決算について説明致します。

先ず初めに、当期の分配金について説明致します。3頁をご覧下さい。当期の一口当たり分配金は12,000円となりました。これは前期比で333円の増加、前回の決算説明で示しました予想額に対して500円上回る水準です。下段の棒グラフでも示しています通り、19期連続での増配となります。 又、この先2期の予想分配金について、薄い緑色の棒グラフで表示しています。次の期である2024年3月期が11,700円、その先の2024年9月期が11,300円です。この今期以降の予想額については、後ほど詳しく説明致します。

続いて4頁をご覧下さい。ここでは当期の実績、そして現在の環境認識とそれに対する我々の運用戦略について、大まかに説明します。先ず、上段の外部成長です。当期の実績としては、フォーキャスト堺筋本町の新規取得と晴海フロントの2回目の譲渡が完了しています。又、取得の欄に参考として記載していますが、12月1日にシーバンス S 棟の持ち分を一部追加取得する予定です。これらの物件の詳細については、後ほど詳しく説明致します。

続いて、この段の1つ右側の外部成長の環境認識です。取引市場では新規供給による受給バランスの不安や、金利上昇によるCAP-Rate上昇の懸念にも拘わらず、引き続き様々なプレイヤーによる投資意欲は、高い状況が続いていると申し上げて良いと思います。この背景には、安定感のある賃貸マーケット、そして、十分なYield Gapがあるのだと思いますが、1年前と比較しますと、海外資金の層がやや薄くなっているという印象もあります。今後は特に、国内の金利動向による影響なども含めて、調整局面を迎える可能性を考慮に入れる必要があると考えています。こうした環境認識のもとに、一番右側の運用戦略として、引き続きスポンサーからのパイプラインを主軸とした外部成長を意識しつつ、昨年から強化している外部マーケットに対する物件ソーシングのネットワークも生かして、安定成長に資する物件に厳選投資していく方針です。又、物件の売却については、従来からの方針を継続します。つまり、市場における各物件のポジションや、将来的なCAPEX投資の水準などを含めた収益性を検証した上で、資産入替戦略の一環としての売却を検討してまいります。

続いて中段の内部成長です。先ず、左側当期の実績をご覧下さい。期末入居率は2つの数値を示しています。上段は売却が決まっている晴海フロントを含めた数値、下段の括弧書きは、これを除いた数値です。晴海フロントは、3回に分けた譲渡が2024年1月に完了する予定ですので、この物件を含んだ数値と含まない数値の2パターンを示しているということです。当期中にこの晴海フロントのオフィス部分の1棟借りテナントは解約した影響で、上段の空室率は前期の95.5%から95.0%に低下しています。これは前回決算時に開示した見込み通りの数値です。一方で、下段の実質ベースの入居率は、既存ビルのリーシングが進展したことによって、95.5%から1%ポイント上昇した96.5%での着地となりました。一番上のテナント入替による賃料月額についても、同様に2段表示しています。上段の数値は34百万円のマイナスとなっていますけれども、晴海フロントの影響を除いた実質ベースでは、プラスの45百万円です。

次に真ん中の環境認識、現状のリーシングマーケットについてです。 2023年は、オフィスの大量供給によるマーケットの悪化が懸念されましたが、強い需要に支えられて、マーケット空室率は、年初以来、概ね横ばいで推移しています。平均賃料の底打ちも近いのではないかというのが、市場の見通しになっています。これを踏まえた我々の今後の運用戦略ですが、リーシングに関してはメリハリをつけた対応を行います。詳しくは、これも後ほどの頁で説明致します。最後に下段の財務戦略です。先ず当期の実績です。左側は、4月の投資口追加発行の影響を加味した、5月15日時点の数値を記載しています。LTVについては、8月にフォーキャスト堺筋本町を取得したことに伴う借り入れによって、9月末時点で42.6%となりました。次に平均利率です。長期固定を中心とした借入という大きな方針に変更はありませんが、足元でイールドカーブのスティープ化が進んだ状況を踏まえまして、リファイナンスに際して、一部で5年の長期固定や10年の変動借入を実施しています。こうした取り組みによって、当期末の平均利率は、0.40%と5月15日時点の0.41%から1ベーシスの低下を実現しています。この背景についても、後ほど少し詳しく話し致します。

頁を進めて頂きまして6頁、当期に取得したフォーキャスト堺筋本町の説明です。この物件は、独自のリーシングルートから取得したものです。新規に持分100%を取得しました。価格は172億円です。竣工は2009年ですので、築14年と比較的新しいビルですが、2018年には更に共用部の改修工事が実施されていまして、エントランス、各階の廊下やトイレなどを含めて、洗練された仕上がりになっています。基準階は280坪の正形のフロアプレートでして、空調は15 区画への分割に対応していますので非常に貸しやすいビルです。立地は大阪の中でも伝統的なオフィスエリアである堺筋本町地区です。地下鉄の堺筋線と中央線が通ります堺筋本町駅の出入口が本物件の目の前で、交通アクセスの面においても大変優れています。

次の7頁は、12月1日に追加取得予定のシーバンスS棟についてです。4.2%持分の追加取得で、価格は23億円です。従来からJREで約13%を保有しておりまして、今回の追加取得によって、持分割合は約17%に高まります。2012年には大規模リニューアルが実施されておりまして、築年数を感じさせないグレード感を維持しています。又、現在、最寄り駅である浜松町駅の整備工事が進行中で、近い将来には駅からの歩行者動線が強化される予定です。そして、環境面では、CASBEE認証で最高位となるSランクを取得しています。本物件は2020年に取得して以来、安定的に収益貢献を果たしていますが、今後も高い競争力が発揮できる物件として評価しています。

続いて8頁をご覧下さい。晴海フロントの売却についてです。これに関して前期、前々期の決算でも伝えておりますので、改めての詳細の説明は割愛させて頂きますが、前期から以降3期にわたっての分割譲渡で、これまでに2回の譲渡が完了しています。最終譲渡となる3回目は、2024年1月に予定しており、その売却益の一部は内部留保に当てる予定です。
次に10頁をご覧下さい。こちらは内部成長です。先ず、上段左側の入居率の推移をご覧下さい。冒頭で申し上げた通り、当期末の入居率は、晴海フロントを除いた実質ベースで、前期から1ポイント上昇の96.5%となりました。これは、汐留ビルや新宿フロントタワーなどでの大型空室への埋め戻しが、順調に進んだ結果を反映したものです。今期についても、地方を含めて全国的に貸付が進んでいる一方で、一定の解約も見込まれますので、今期末の入居率は、当期末から横這いの96.5%を予想しています。
少し頁を飛ばして頂いて14頁をご覧下さい。

左側のグラフは、ポートフォリオ内の各ビルの査定賃料の変化を表しています。尚、改めて 査定賃料について説明しますと、年に2回1棟ごとのビルのマーケット賃料水準の査定を CBR に依頼しています。これを査定賃料と呼んでいますけれども、一番右側のグラフ3本を合計しますと、対象物件69件のうち、5物件で上昇、60物件で据置き、4物件で下落となっています。グラフを左から右に時系列でご覧頂くと、オレンジ色で示された下落物件の数は、これまでも緩やかな現象傾向にはありましたが、前期から当期にかけてはその数が大幅に減少しました。そして一番上の都心5区の右のグラフに、濃いグリーンが見えると思いますが これは2020年 9月期以来3年ぶりに、賃料が上昇した物件が出てきたことを表しています。次に右側の賃料 ギャップについてです。賃料ギャップとは、実際の契約賃料からマーケット査定賃料引いた数値です。前期にこのギャップが数年ぶりにプラスに転じて、マーケット賃料水準が実際の契約賃料を下回っている状況ですが、このプラスのギャップ幅が、前期は3.6%だったものが当期は1.2%に縮小しました。以上、説明しました状況から、JREのポートフォリオにおいては、賃料下落の傾向が底打ちし始めていて、一部では上昇の兆しが現れていると見ることができます。先ほど申し上げました通り、2025年の大量供給を見据えて、入居率維持のための配慮を怠ることはできませんが、一方で、ビルごとの入居率や周辺サブマーケットの状況などをよく観察して、場合によっては、強気に賃貸条件を追求していくようなリーシング戦略を織り交ぜながら、 メリハリの効いた運用を進めてまいりたいと考えています。

続いて16頁をご覧下さい。財務戦略です。当期中の長期固定借入の実績としては、左上の表にありますように総額140億円、期間9.21年、平均利率0.68%でした。先ほど説明しました通り、金融市場の変化も踏まえて、今期は長期変動借入も一部で取り入れています。右上の表の2行目の福岡銀行、4行目のみずほ銀行は、いずれも長期変動を借入ですが、利率は0.1%台に抑えることができています。あくまでも我々の大きな方針は、長期固定を中心とした借り入れでして、これを変更するものはありませんが、足元では日本のマイナス金利政策が維持される一方で、YCC の柔軟化によってよって7月以降国内の長期金利は少しずつ上昇しています。今後の金利は、長期、短期ともに、日本の物価動向や海外の金利水準の影響を受けると思いますが、いずれにせよ、全体として不透明感がある環境です。従いまして、我々としては足元の借入コストの大小と、長期固定による財務の安定性とのバランスを意識しながら、10年未満の短い期間の固定借入や、変動借入も織り交ぜつつ、これまで以上に慎重な姿勢で資金調達を進めてまいります。

少し頁を飛ばして21頁をご覧下さい。鑑定評価額と含み益の状況ですが、含み益が前期に比べて8億円減少しています。ここで留意が必要なのは、この8億円のマイナスには晴海フロントの2回目の譲渡による影響として、マイナス35億円分が含まれているということです。従いまして、この晴海フロントの影響を除いた既存ビルの含み益自体は、前期から27億円増加していることになります。

次はESGです。23頁をご覧下さい。我々は、CO2排出削減に関する目標を策定していますが、この目標に対する進捗状況の実績を、上段の表で示しています。CO2排出量の削減比率、そして再エネ導入比率ともに、2022年度において、2030年度目標に対して70%を超える進捗となっています。現時点としては、非常に高い進捗率を達成していると自負していますし、2050年ネットゼロの達成に向けた我々のこれまでの取り組みの成果が、数字として現れたものだと捉えています。引き続き保有物件の空調更新やLED化工事、そしてZEB化の推進などによって、ポートフォリオ全体の省エネ化を推進するとともに、再エネ電力の導入にも取り組んでまいります。続いて下段です。ただ今説明しましたCO2排出量削減の2030年度目標については、昨年 SBTi認定を取得済みですが、この度、長期目標である2050年度ネットゼロ目標についてもSBTi認定を取得しました。資料上は「申請しました」となっていますが、ちょうど今朝、認定通知を受領しています。このSBTi認定は、我々のネットゼロ目標が、パリ協定で定められた国際的な目標に整合していると認められたことを意味しますので、我々の活動を一層後押ししてくれるものと考えています。

続いて24頁をご覧下さい。上段です。この度、エネ投資を推進する仕組みとして、インターナルカーボンプライシング制度を導入しました。改めまして、そもそもカーボンプライシングと言いますのは、炭素排出量の価格付けを意味します。代表的なものとしては、政府による炭素税や排出量取引制度が挙げられます。ヨーロッパにおいては、既に相当な実行力を伴った形で進められていますけれども、日本でも政府レベルで炭素税の導入は検討されているところです。こうした状況を踏まえて、先ずはJRE独自のインターナルカーボンプライシング制度を導入することにしたということです。このインターナルというのは、我々が独自に炭素価格を設定して、脱炭素に貢献する投資を推進する仕組みです。具体的には、CO2削減が見込まれる省エネ工事を検討する際に、その炭素価格を算出して、CO2削減量を経済的価値として認識します。そして、この経済的価値を、工事実施を判断する際の参考情報とすることで、省エネ工事を推進するインセンティブとして活用していくものです。この制度の導入意義について少し補足しますと、実際には我が国で広範囲に炭素税が課されるという具体的なスケジュールが示されているわけではありませんが、既にそれに向けた動きは見られます。例えば、東京都では2010年からキャップアンドトレード制度というものが実施されていまして、JREのポートフォリオからも16棟のオフィスビルがその対象となっています。コロナ禍やウクライナ戦争の影響もあって少し足踏みした感もある脱炭素の流れではありますが、こうした危機を経て、寧ろ一層、その重要性に対する認識が世界的に深まっています。従いまして、このインターナルカーボンプライシング制度が、現時点では具体的なコスト削減につながらない取り組みに見えるかもしれませんが、先んじてこうした判断基準を導入しておくことで、来るべき日に備えるという点でもその意義は非常に大きいと考えています。

少し飛んで29頁をご覧下さい。決算および業績予想の推移についてのご説明です。損益についての詳細は、分配金増減の頁で説明致しますが、ここでは1点だけ触れたいと思います。右下の主な増減要因(業績予想比)というところをご覧下さい。ここでは前回の決算説明の際に示しました業績予想と、当期の実績値との差異要因を示しています。分配金が前回予想11,667円に対して12,000円での着地となりましたが、その最大の要因が費用項目側の水道光熱費の下振れです。ここが予想比でマイナス556百万円、これはLNGや原油などの燃料価格の下落に伴って、仕入れ電力の燃料調整費が想定以上に下がったことが主な要因です。

更に数頁飛んで32頁をご覧下さい。最後に決算および業績予想の推移について一口当たり分配金の観点での説明です。4本の棒グラフが並んでいます。左の2本は前期である23年3月期と当期である23年9月期の実績、そして右の2本はベースの緑色が少し薄い色になっていますけれども、将来の予算期である24年3月期と24年9月期です。プログラムの頭に、夫々の期の一口当たり分配金であるDPUが記されています。そして棒グラフ同士の短いバーが、決算期ごとの増減要因を表しています。いずれの棒グラフでも、下の緑色の部分が主に運用によって発生する賃貸事業収支ベースの分配金原資です。これをEPUと呼ぶこともあります。そして、その上のネイビー部分が、物件売却益、若しくは内部留保を取り崩しによる分配金原資を表しています。先ず、増減要因を表す短いバーのうち、一番左の賃料共益費を左から右にご覧頂きたいと思います。影響の大きい期と小さい期がありますが、全てプラスの数値となっています。

この部分は、前期まではマイナス影響のトレンドが続いていましたが、入居率の上昇によって、賃料収入が増加することによるプラスの影響へと、移り変わったことを反映しています。次にその2つ右のバー、賃貸事業費用です。この頁の中央にあるオレンジのバーが大きくマイナス593となっています。これは、主に修繕費の増加によるものです。この24年3月期には、晴海フロントの3回目譲渡を予定しています。これによって大きな売却益が見込めますので、それにぶつける形でこの期にある程度の修繕費を消化させる予定です。一番右の24年9月期の分配金は11,300円を予想しておりますが、このうち上の青い部分の2,049円は、内部留保の取り崩しを想定しています。2期先のことですので一旦この形で示していますが、一方でポートフォリオの入替戦略も継続してまいりますので、売却益に差し替わる可能性もあります。その点ご承知おき頂ければと思います。最後に下の緑色の部分、つまり賃貸事業収支ベースの分配金の推移をご覧下さい。一番右の24年9月期には、前の期と比較して235円のプラスを見込んでいます。賃料共益費の増加傾向とコストの上昇トレンドが止まったことで、JRE の収益性が底を打って好転していく兆しを示すことが出来ていると考えています。以上で資料に沿った一通りのご説明とさせて頂きます。

最後に改めて現在の運用環境について少し 補足したいと思います。3つの市場である賃貸市場、売買市場、金融市場のいずれにおいても、引き続き見通しが難しい状況であることに変わりありませんが、少なくとも賃貸市場に関しては明るい兆しが見られるようになりました。2023年には大規模な新規物件の供給がありました。そして一部の規模の大きな企業を中心に、在宅を含めたハイブリッドワーク体制によるオフィス面積縮小の動きも見られました。ところがこうした影響を十分に吸収するだけのグロスの需要増があったわけです。2024年は新規供給も限定的ですので、業績が回復している日本企業の増床に、コロナ禍で一旦足踏みした外資系企業が面積を増やす動きが加われば、いよいよ賃料水準の回復が望める局面が訪れるのではないかと考えています。金融市場に関しては、不安要素も多いですけれども、安定的な物価上昇が達成された結果として金利が上昇するのであれば、少し時間差はあるにしても賃料上昇にも繋がってくるはずですので、マイナスの影響はある程度オフセットされることを期待しても良いと思います。いずれにしましても、こうした市場環境下においてJRE としては、先ず着実な内部成長を目指しています。その上で資金調達に関しては、今まで以上に柔軟さと慎重さを持って臨みつつ、外部成長戦略としては引き続き戦略的な資産入替を心掛けてまいります。
私からの説明は以上です。有難うございました。