ヘルスケア&メディカル投資法人 2023年7月期決算概要

ヘルスケア&メディカル投資法人
2023年7月期(第17期)決算動画説明書
○動画  https://www.video-streaming.net/ir/3455/2023_07_17/
○説明資料
https://hcm3455.co.jp/file/term-ae3bc1e7ec05397493bd24fda64e8401ac03e9dc.pdf
○説明者 ヘルスケアアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長 吉岡 靖二
○説明 
2023年7月期(第17期)決算概要並びに第18期、第19期の業績予想、そして足元の市場環境を踏まえた運用戦略やESGの取組み状況について説明致します。

資料の2頁をご覧下さい。第17期のサマリーです。先ず、業績面です。営業収益は前期に計上した売却益が剥落して減収となりましたが、予想比では、当期純利益が、一般管理費の削減効果等により上振れしました。この結果、一口当たり分配金も、3,282円と予想比+17円の着地となりました。又、一口当たりNAVは、132,912円、前期末比+1,879円と、5期連続の上昇となりました。財務面ですが、有利子負債の総額は、前期末と変わらず39,150百万円、LTVも48.5%とほぼ横這い、前期末に実施したリファイナンスは、金利上昇局面ではありましたが、借入金の長期固定化および返済期限の分散という、従来の基本方針を継続しました。尚、長期発行体格付けはA+で変更ありません。次に、ポートフォリオの運用状況です。当期中において、新たな資産の取得および売却はなく、期末時点の資産規模は48 物件、792億円で増減ありませんでした。一方で、鑑定評価額の上昇に伴い、含み益は103億円、含み益率は13.2%に拡大しました。又、ポートフォリオの稼働率は、当期中も100%を維持し、テナントの解約や賃料の減額、支払い猶予は一切ありませんでした。それでは決算の中身を、もう少し詳しく見てまいります。

5頁をご覧下さい。A列が前期第16期の実績、B列が今年3月に公表した第17期の予想値、そして、その右のC列が第17期の実績です。先ず、トップラインの営業収益ですが、第16期に取得した2物件からの賃料収入が、通期で寄与した一方で、資産の入替伴う譲渡益が剥落した結果、193百万円減収の2,438百万円、費用面では、第15期および第16期に取得した、計12 物件に関わる固都税が新たに費用計上されるなど、賃貸事業費用が増加しましたが、資産運用報酬や資産保管、一般事務委託手数料などの一般管理費が減少した結果、営業費用は前期比-8百万円、予想比でも3百万円の下振れとなりました。一方で、営業外費用は、前期末に借り換えた9,750百万円に関わる金利コストの上昇により、支払利息が増大しました。これらの結果、当期純利益は、1,068百万円、前期比では210百万円の減益となりましたが、予想比では+5百万円の上振れとなり、一口当たり分配金は、予想から17円積みまして3,282円としました。

6頁は、第17期の分配金の増減をブレイクダウンしたものです。対前期比では、譲渡益の剥落といった一時的な要因を除くと、固都税などの賃貸事業費用および支払利息等の営業外費用の増加が、分配金減少の主な要因と言えます。

7頁です。B列が、今年3月に公表した第18期の前回業績予想、C列が今回公表する予想値です。先ず、営業収益ですが、新たな資産の取得や売却がないという前提で、第17期実績対比横這いの2,438百万円を計画、一方、費用面では減価償却費やエンジニアリングレポートの再取得に関わる調査費等の増加を見込み、当期純利益は1,050百万円、一口当たり分配金は、前回予想と同じ3,235円を計画しています。D列は、今回新たに公表する第19期の業績予想となります。第18期と比べて営業収益は横這い、費用面では減価償却費の増加に加えて、第18期末に期限が到来する借入金7,250百万円のリファイナンスに伴う支払利息等の増加を見込んでいます。この結果、一口当たり分配金は、現時点では3,200円を予想しています。

次の8頁は、第18期、並びに第19期の予想分配金の増減のブレイクダウンです。減価償却費の増加および金利上昇に伴う支払利息の増加が、分配金減少の大きな要因になっています。当社としては、トップライン収益の増強、金利環境に即した柔軟な資金調達、各種経費の見直し等により、分配金の引き上げを目指してまいります。
9頁です。グラフの通り、コロナ禍においても、一口当たりNAVは堅調に推移しています。 引き続き一口当たり分配金の中長期的な安定成長、並びに一口当たりNAVの増大を通じて、投資主価値の向上に努めてまいります。

10頁は2020年1月以降の、HCMの投資口価格の推移を示しています。コロナ禍の時期を挟み、リート市場が大きく変動する中においても、各指数を概ねアウトパフォーム、一口当たりNAVを超える水準で推移しています。景気に左右されない底堅い需要と、長期固定賃料に基づく安定的なキャッシュフローといったHCMの特徴、又、昨年9月からは、グローバルな不動産インデックスに採用されており、こうした点が投資家の皆様から一定程度の評価を頂けたものと考えております。

12頁をご覧下さい。運用状況です。こちらには、HCMのポートフォリオの主なデータを示しています。資産規模は、取得価格ベースで48 物件、792億円。平均鑑定利回りは5.5%。投資エリアの3大都市圏比率は、82.9%と引き続き高い水準を維持しています。

13頁をご覧下さい。継続鑑定評価の概要です。第17期末時点の鑑定評価額の合計は887億円、前期末時点と比べて、同じ48物件で5億円増加致しました。個々に見てみますと、48物件中16 物件で鑑定評価額が上昇した一方で、4物件で下落しました。下落した主な要因は、エンジニアリングレポート上の再調達価格、修繕費やCAPEXの見積もり金額が、茲許の物価上昇を反映して増大したためです。尚、CAP-Rateは15物件で低下し、 一方、上昇した物件はゼロ、全物件の平均は4.77%となりました。

14頁です。鑑定評価額の上昇に伴い、ポートフォリオの含み益は着実に拡大しています。 第17期末時点の含み益は、103億円で含み益率は13.2%となりました。

15頁をご覧下さい。HCMの大きな特徴の一つは、その長期安定的なキャッシュフローです。私共は、木目細かな事業デューデリジェンスおよび継続的なモニタリングを通じて、オペレーター、並びに施設の状況をしっかりと見極め、安定的なポートフォリオの構築に注力しています。事業デューデリジェンスに関しては、オペレーターの業歴・業容や財務内容、事業モデルはもとより、コンプライアンス面への配慮、人材の確保、育成方針、業務の効率化に向けた取り組みなどについても、経営陣や施設長らとの定期的な面談を通じて確認しています。当社では、2021年10月に、ヘルスケア業務推進部という専門部署を設置し、こうした事業デューデリジェンスやモニタリングのほか、ヘルスケア業界の調査分析などを行っています。尚、ヘルスケア業務推進部長は、三井住友銀行にて医療・介護関係事業者との取引推進業務に長年従事し、国交省がガイドラインで定める、ヘルスケア施設の事業特性を十分に理解している専門家に該当致します。HCMが、現在保有する物件のオペレーターは全部で16社です。シェア別では、スポンサーのシップヘルスケアグループのグリーンライフおよびグリーンライフ東日本が合わせて23.8%でトップ、これに業界大手の損保ケアやベネッセスタイルケアが続きます。医療法人協和会は、HCMの中核物件の一つである千里中央病院のオペレーターで、昨年から地元の兵庫県川西市の総合医療センターの運営にも、指定管理者として携わっている大手医療法人です。HCMは、オペレーターとの間で、原則、賃料固定、長期の賃貸借契約を結んでいます。第17期末時点で賃貸借契約は、全て固定賃料、 又、平均残存年数は12年です。オペレーターとの契約期限が、第20期末、2025年1月末までに到来する物件は、グランダ鶴間・大和の1施設のみです。当該施設は安定稼働しており、現時点では、現契約の規定に従い、引き続き2年間の自動更新を想定しています。尚、これまでもお伝えしている通り、新型コロナウイルス感染症によるHCMの業績への影響は、殆どありません。又、茲許、エネルギーコストが上昇していますが、HCMにおいて、水道光熱費はテナント負担になっていますので、直接的な影響はありません。

16頁です。HCMが保有する病院以外のヘルスケア施設の入居率は、平均90%前後で推移しています。コロナ禍で、一時的に新規の入居者の受け入れを制限したところもありましたが、 現状、事業収支も含め、運営面で特段心配している施設はありません。又、HCMは、通常オペレーターに物件を一括でマスターリースしているため、実際の賃貸面積を賃貸可能面積で割り算した稼働率は、各施設の入居率に影響されることなく、上場来、概ね100%を維持しています。

続いて18頁、財務状況です。先ず、環境認識ですが、世界的な金融引き締め、日本銀行によるイールドカーブコントロールの運用見直しなどの影響を受けて、昨年末以来、長期金利が上昇しています。一方で、レンダーの融資姿勢に今のところ大きな変化は見られません。 当社としては、今後の金利動向に留意し、従来通り中長期的な財務の健全性を確保しつつ、 分配金への影響も意識しながら、バランスのとれた財務運営を心がけてまいります。LTVについては、引き続50%前後を目処にコントロールします。又、スポンサーの三井住友銀行を中心としたバンクフォーメーションを維持しつつ、新規のレンダーの招聘も検討してまいります。第17期末時点の有利子負債は、総額391.5億円、総資産ベースのLTVは48.5%で、仮に50%まで引き上げた場合の調達余力は、約25億円になります。尚、時価ベースのLTVは43%で、前期末比0.2 ポイント低下致しました。

19頁です。借入先は全部で15社です。前期末に実施したリファイナンス時に、SBI新生銀行に新たに加わって頂きました。長期発行体格付けは、A+。今後の債券市場の状況次第では、ソーシャルボンドの発行も選択肢の一つです。下の図は、返済期限の分散状況を示したものです。第17期中に期限が到来した短期借入金20億円については、従来と同条件にて継続致しました。第18期末には、長期借入金72.5億円が返済期限を迎えますが、現時点では、長期固定、期限の分散といった、これまでの基本方針に即したリファイナンスを想定しています。

21頁をご覧下さい。外部成長の取り組みです。HCMのポートフォリオは、上場時の16物件236億円から、3度の公募増資を経て、48 物件792億円まで規模が拡大、中期目標として掲げている1,000億円達成が視野に入ってきました。

22頁です。現在のヘルスケア不動産と投資市場ですが、外資系ファンドをはじめ、多様なプレイヤーの参入もあり、投資事業は旺盛です。又、CAP-Rateも依然として低下傾向で、過熱感のある状況が続いています。私共としては、引き続き強力なスポンサーサポートやウェアハウジング機能を活用し、分配金への影響や中長期的な収益力を意識しつつ、優良なパイプラインの拡充に注力してまいります。又、従来の稼働中の高齢者向け施設に加えて、例えば、賃貸住宅や商業店舗など、ヘルスケア関連以外の用途を含む複合施設への投資、又、匿名組合出資など投資対象や投資形態については、柔軟に検討していく方針です。尚、第16期にHCMとして初めて資産の入替を実施しましたが、今後も中長期的なポートフォリオの質の向上、並びに安定的な収益力の維持・強化の観点から、必要に応じて検討してまいります。現時点で、HCMが優先交渉権を有するパイプラインの規模は、総額約300億円にのぼります。各パイプライン物件は、主にスポンサーのバランスシートまたはスポンサーが組成したブリッジファンドが保有しています。ブリッジでの想定保有期間は、相手側の意向にもよりますが、通常1年から5年です。取得環境や物件の稼働状況等を踏まえて、HCMへ組み入れていく方針です。右下下段は、パイプラインの事例です。PDハウス東大阪は、デベロッパーによる開発の出口を捉え、スポンサー以外のウェアハウジング機能を活用したものです。当施設は、パーキンソン病患者に特化した住宅型有料老人ホームで、2022年7月に開設しました。サニーライフ船橋は、185室と比較的規模の大きい住宅型有料老人ホームです。前オーナーの大手不動産会社の売却ニーズをタイムリーに捕捉し、現在、スポンサーの1社がバランスシートにて保有しています。

24頁です。病院不動産の取り組みです。病院不動産を取得、運用している上場リートは、現状、私共HCMだけです。HCMがターゲットとする病院は、経営の安定した病院です。この点、事業再生型のファンドとは異なります。HCMは、これまで右下写真の千里中央病院と新潟リハビリテーション病院の、2つの病院不動産に投資しています。不動産の維持管理に関わる手間やコストが削減できて、経営資源を本業の医療に集中できるようになったと、オペレーターの反応も概ね好意的です。病院不動産の取引は、高齢者施設などと比べて、まだまだ少ないのが実情です。スポンサーのネットワークを活用して、又、業界団体の学会等への参加を通じて、リート活用のメリットを病院関係者に丁寧に説明し、優良な病院案件の捕捉に努めてまいります。

26頁をご覧下さい。ESGの取り組みです。当社は、ESG委員会を設置し、全社を挙げて ESGの取り組みを推進する体制を構築しています。HCMは、投資理念に掲げている通り、 社会インフラとも言えるヘルスケア施設の整備拡充を支援し、国民一人一人が安心して、生き生きと生活できる社会の実現を目指しています。ESGやSDGsとは親和性が高いと考えています。

27頁です。当社では、昨年、2022年度からGRESBに参加しています。初年度は、リアルエステイト評価で、1-Star、開示評価で最上位のAレベルを獲得しました。又、今年の3月にはTCFDへの賛同を表明し、国内の賛同企業による組織であるTCFDコンソーシアムにも加入しました。環境面では、レジリエンスの向上にも取り組んでいます。昨年取得した 「はなことば追浜」においては、周囲が急傾斜地になっており、長期的な安全性確保の観点から、写真の通り、建物に隣接する擁壁の補強工事などを売主負担で実施した上で、ポートフォリオに組み入れました。

28頁は、Sのソーシャル面の取り組みです。当社内の取り組みとして、毎年従業員向けに満足度調査を実施して、風通しの良い職場環境づくりと生産性の向上に努めています。又、有給休暇の取得奨励やテレワーク制度の導入などのほか、病気休暇を新設するなど、従業員のワークライフバランスや健康増進を積極的にサポートしています。

29頁は、Gのガバナンス面です。当社では、自律的コンプライアンス意識の醸成を目的として、定期的にコンプライアン勉強会を実施しています。これには私自身や常勤取締役を含む全役職員が参加しています。昨年度は、インサイダー取引規制や利害関係者取引の留意点、 顧客情報、個人情報等の管理、反社会的勢力の排除などをテーマに、全部で22回開催しました。

本日の私からの説明は以上になります。新型コロナウイルス感染症が5類に移行したとはいえ、感染拡大には引き続き注意が必要です。又、不動産価格の高止まりや長期金利の上昇 などにより、HCMを取り巻く収益環境は、大きく変化しつつあります。私共としては、これからも、専業リートならではの目利き力を生かした、優良なヘルスケア施設への投資を通じて、 トップライン収益の増強を図るとともに、必要に応じてコスト面の見直しも行いながら、安定的な分配金を目指してまいります。今後とも、ご指導ご鞭撻賜りたく、宜しくお願い申し上げます。本日はご視聴有難うございました。