産業ファンド 2023年1月期決算概要

2023年1月期(第31期)決算動画説明書及び質疑応答
○動画   https://www.net-presentations.com/3249/20230330/ah4u3uf/
○資料 
https://contents.xj-storage.jp/xcontents/32490/264ee657/97e8/45b7/b8d1/9e19cc908454/20230330114146798s.pdf
○説明者 株式会社KJRマネジメント 
      
代表取締役社長 鈴木 直樹
○説明 
<上田 英彦執行役員インダストリアル本部長よりの説明>
直近の運用状況について説明致します。
3頁をご覧下さい。今期のポイントは、公募増資の実施を通じた成長軌道への回帰です。前回の公募増資から2年8ヶ月が経過し、本投資法人は、その間に物件入替えによるポートフォリオの質の強化、そして、神戸ロジスティクスセンターの対応や湘南ヘルスイノベーションパークの水光熱費高騰など、既存物件の課題に注力してまいりました。この度、既存物件の課題解決に一定の目途を付け、公募増資の実施により分配金の成長を実現致します。更に、外部成長を軸とした成長を引き続き目指すものの、当面の不安定な金融環境の継続も想定し、LTVを引き下げることで、投資余力の拡充を図ります。先ず、既存物件についてですが、神戸ロジスティクスセンターの売却により、含み益を顕在化させ、売却時期を3期に亘って分散させることにより、分配金の維持・向上を図ります。湘南ヘルスイノベーションパークの水光熱費については、主要テナントにも追加負担を求め、約65%をパススルー型に契約変更することで、収益性を改善させます。続いて公募増資の実施ですが、今回の取得価格の合計は220億円、NOI利回り5.5%、償却後NOI利回り3.9%、継続的利益超過分配考慮後で4.3%の物件を取得することで、分配金成長とLTV引下げを行います。

5頁をご覧下さい。今回の公募増資の概要ですが、オファリングハイライトが3つあり、1つ目は、継続的な投資主価値の工場、2つ目は、CRE提案およびPRE提案による高収益物件の取得、3つ目は、収益力、資産価値向上に資する再開発案件の推進です。今回の公募増資によって、固都税の費用化や、一過性の売却益の影響を除く一口当たり分配金は3%の増加、LTVは簿価ベースで0.3ポイント、時価ベースで0.1ポイントの引下げを見込んでおります。
6頁をご覧下さい。今回の取得物件の一覧です。取得6物件のうち2物件が工場、4物件が物流施設です。下から2行目の厚木LCⅢは、既存物件の未消化容積を活用した冷蔵・冷凍倉庫の建替えであり、本投資法人としては初となるオンブックでの再開発プロジェクトです。又、今回の取得物件うち、2物件はPREであり、1行目の大田MCは、東京の大田区がマスターリースしている物件です。本投資法人は、これまでも神戸市や広島県などのPRE案件がありましたが、いずれも地公体の現金化を目的とした流動化でした。本件は地公体がテナントとなって、長期に亘って関与する案件です。全国には財務健全化が必要な地公体が多くありますが、これまでのような遊休資産の売却のような現金化だけではなく、本件のように、J-REITが保有する物件に地公体が長期に亘って利用する事例が、東京都大田区と出来たことは、今後PRアイデアの中で活用できるのではないかと考えております。
7頁をご覧下さい。左側が今回取得のNOI利回り、右側が含み益率を他案件と比較したグラフです。本投資法人のCRE/PRE戦略および再開発案件の推進により、今回の取得物件は、他の物流系リートに比べ収益性も含み利益率も高くポートフォリオの質と資産価値の向上を実現致します。

1頁を飛ばして9頁をご覧下さい。本投資法人の2月中旬以降の投資口価格の推移を掲載しております。不透明なマクロ環境下ですが、神戸LC売却の発表、公募増資の発表など、各種施策を実行し、投資口価格も徐々に回復しております。

11頁をご覧下さい。第31期分配金実績ですが、当初予想より上振れて、3,122円となりました。水光熱費は増加しましたものの、そのほかの費用の減少で、全体として収益は上振れました。一方で、羽村LCの解体工事で廃棄物等が発見され、会計上の要請により資産除去債務費用を計上しております。当然これは税会不一致の問題であり、一時差異等調整引当額、所謂ATAを計上することで、第31期の分配金を平準化させ、第32期以降3期に分けて廃棄物の処理をする時に、夫々、ATAの戻入れが発生する予定です。これらのATA戻入れについては、神戸LCの売却益を、第32期以降3期に分けて計上することもあり、分配金に大きな影響を与えないように考えております。続いて第32期の予想分配金ですが、当初予想から上振れ、3,084円と見込んでおります。当初予想では、再開発案件や、湘南HIPの水光熱費等の平準化で、利益超過分配として379円を見込んでおりましたが、神戸LCの売却、羽村LCの廃棄物処理費用のATA戻入れ、水光熱費の改善などにより、利益超過分配を実施することなく3,084円を分配する予定です。
12頁をご覧下さい。第33期の予想分配金は3,165円と見込んでおります。主な変動要因は、神戸LCの2回目の売却益の計上、羽村LCの2回目の廃棄物処理のATA戻入れ、新規取得物件の収益寄与および水光熱の改善です。利益超過分配は40円としておりますが、これは当初予想していた利益超過分配から売却益等を差し引いた分配であり、詳細は3頁に記載しております。最後に固都税の費用化や一過性の売却益の影響を除く一口当たりの分配金は、3,153円と試算しております。調整項目として、神戸LCの売却益や羽村LCの除去費用、固都税費用化、保有物件の調整および湘南HIPの水光熱、修繕費の平準化を考慮しております。

14頁をご覧下さい。開発のパイプラインの状況です。現在厚木LCⅢ以外に再開発を進めている案件が3つあります。先ず、習志野LCⅠ、Ⅱの再開発ですが、全体で物流施設2棟、延べ床面積は合計で157,600m2を想定しております。習志野LCⅠの再開発は、既にテナントを確保し、完成後の延べ床面積は27,600m2を見込み、習志野LCⅡの再開発は、延床面積が130,000m2と習志野LCⅠの約5倍の規模感を想定しております。続いて、羽村LCです。解体工事の中で、地中埋設物や廃棄物が発見され、竣工日は当初予想より半年から1年ほど遅れる予定ですが、既にテナンとは竣工日が遅れる旨の話を進めており、現時点において、引続き完成後も本施設を利用したいという言葉を頂いております。最後にスポンサーのKKRとの取り組みです。スポンサー変更後11か月が経過しますが、KKRとは日々様々な意見交換をしており、この度、KKRの投資先2社と再開発に関する基本協定書を締結致しました。再開発プロジェクトの概要としては、投資先企業A社が保有する不動産を有効活用し、新規事業拡大ニーズを持つ別の投資先企業B社向けに、大型の物流施設を開発致します。既存物件の解体、開発、保有の各フェーズの中で、事業参画者が夫々の役割を担う協働事業であり、本投資法人は過度の開発リスクを回避しながら、再開発プロジェクトを進めていく予定です。このように本投資法人は、自社だけでなくスポンサーや外部パートナーを活用した再開発案件の推進により収益性の高いパイプラインを積上げ、引続き継続した成長を続けていきたいと考えております。

15頁をご覧下さい。本投資法人を取り巻く取得環境について、外部取得と既存物件の再開発・増築について説明致します。事業会社のノンコア資産の売却相談や、セールスアンドリースバックについては継続して提案をしております。CREの傾向としては、業績が回復途上の事業会社によるCash Needの相談が多い印象です。又、自動車部品、半導体関連など、国内工場の新設や、製造業の在庫積み増しに伴う物流開発の相談、建築コスト高騰や物流リーシングの長期化に端を発する、開発案件の売却相談等も増えてきております。既存物件では、テナントリレーションの中で事業拡大や拠点開発のニーズを捉えた開発物件の提案や、未消化容積・建蔽を活用した増築提案を進めております。最近では、工場の底地案件で、建物を追加取得し、リノベーションによるValue-up提案なども進めており、建築コストの高騰が進む中、リノベーション提案は、テナント候補先にとってもリーズナブルな賃料設定が好評であり、一定の手応えを感じております。右側をご覧下さい。検討案件のロングリストとしては35物件、2,123億円あり、足元詳細検討案件は13件、所謂ショートリストは13案件となっております。ショートリストの内訳は、工場・研究開発施設を中心とした非物流施設が30.5%、物流施設が24.6%、開発案件が44.9%となっており、開発案件やスポンサー案件も加わるなど、取得環境の変化に対応しながら、産業ファンドらしい取得を継続していきたいと考えております。

17頁をご覧下さい。神戸LCの売却について説明致します。2021年にエンドテナントが退去後、改修工事を実施し、リーシング活動をしておりました。一方で、本物件の立地特性や、スペック等を鑑み、並行して売却活動を行ったところ、今回の売却価格で取得したいという買い手が現れ、ポートフォリオに与える影響を総合的に判断し、売却を決めました。先程の業績予想で触れたように、売却益を3期に亘って計上することで、分配金の維持・向上を図る予定です。

18頁をご覧下さい。湘南HIPの水光熱費について説明します。本施設の水光熱費は、当初100%貸主負担でしたが、水光熱費が高騰する中で、一部をテナントに負担して頂けないか交渉をして来ました。一方で、今後東京電力の更なる値上げ等も始まることもあって、本投資法人は、主要テナントである武田薬品工業と、一定の経済条件の変更と合わせ、約65%をパススルーに切り替えることに合意致しました。今回のスキーム変更の効果ですが、水光熱費の収支を、変更前の第31期の実績と変更後の第32期予想を比較した場合、経済条件の変更も考慮して、1期あたり約3億円の収支が改善する見込みです。

19頁をご覧下さい。続いて、期間満了を迎えるテナントへの対応状況です。左上のグラフをご覧下さい。こちらは今後3年間に期間満了を迎える契約満了の状況です。本投資法人は、これまで、契約満了の機会にマーケット賃料との乖離があれば、賃料増額を実現してきました。参考までに、直近1年間で契約更改を行った17件のうち5件で、7.5%の賃料アップが出来ております。下段に、今後契約満了を迎える主要な物件を記載しております。昭島LCおよび神戸DHCについては、継続利用の確認が出来ており、今後契約条件について協議を進める予定です。横浜都筑R&DCについては、テナントであるアイネスから、2024年末を持って、解約する旨の通知を受け取っており、後継テナントの誘致の活動を開始しております。初期的反応としては、賃貸に加え取得が出来ないのかとの問い合せもあり、今後は、リーシングを軸としつつも、条件次第では売却も視野に入れつつ対応を考えていく予定です。

少し飛びますが、22頁をご覧下さい。前期は、借入での物件取得もあり、LTVは多少上昇しましたが、今回の公募増資により、LTV49.0%、時価LTV40.4%に低下する見込みです。基本的に、これまでのLTVの考え方に大きな変更はなく、多少の上振れ、下振れはあるものの、現状の水準を維持する見込みです。
23頁をご覧下さい。今後の借換えの状況です。本投資法人は、これまで期間10年前後の後期の固定借入が中心であったこともあり、J-REITの中では、既存の借入コストは比較的高めでした。そういった背景もあり、2024年までは高金利の既存借入金の借換えが続いており、足元ではベース金利が少し上昇しているものの、引続き借入コストの改善を見込んでおります。今後も、基本的に長期固定借入を推進するものの、年限などについては、返済期限の分散状況や、全体の借入コストや分配金に与える影響を見ながら、柔軟に判断していきたいと考えております。

最後にESGについてです。25頁をご覧下さい。今期の主な取組みは2つあります。1つ目は、SBTiです。本投資法人は2021年に、2050年カーボンニュートラルに向けたCO2排出量削減目標を設定しましたが、2023年2月にこれまでの目標を強化し、GHG総排出量を、2021年対比で2030年までに42%削減とする新たな目標を設定し、併せて国際的なイニシアティブであるSBTi(Science Based Targets initiative)から、科学的根拠に基づく目標として認定を取得致しました。2つ目はCDPです。IIFとして2022年初めて気候変動問題に対する活動や開示を評価するCDP気候変動プログラムに参加し、最上位レベルのリーダーシップに位置するA-のスコアを取得しました。
その他のESGの取組みは26頁、27頁に記載しており、又、2023年2月にESGレポートも発行しましたので、併せて確認をお願い致します。
29頁以降は、利益超過分配の明細、第31期決算数字および第32期業績予想の増減要因を纏めておりますのでご参照下さい。
以上で、私からの説明は終了致します。

質疑応答
Q:15頁に今後の物件取得パイプラインの記載があるが、従前と比べると開発案件が占める割合が多くなっていると感じているし、グラフでも半分ぐらいが開発案件という状況ですが、今後についても物件取得の際は開発がらみのものが多くなっていくのか、若しくは、今まで通りの高い利回り物件も入ってきそうなのか、取得のプランについてお聞きしたい。
A:パイプラインについてですが、開発案件の相談は増えてきています。ただ、この中にはいくつか分けなくてはいけないのは、我々の方でテナントを見つけなくてはいけない場合と、BTSで建てる場合とか、そもそもそういったもの、開発含みのものを最後買ってほしいとか、いろいろな種類があります。物流の取引量というのはそんなに多くなく、皆さん自分で作って系列リートに譲るとかありますので、我々について言うと昔から保有している未消化容積が大きいところとか、あと幾つかテナントさんというか会社さんと相談をしながらやっている部分もあるので、一定の量の開発案件は出てくるとは思います。一方で、収益性の高い、これまでのCREというところに関しても、これに関しては引き続きやっていきたいと思っています。さっき、話しましたように、会社さんの中では収益のリカバリーが遅れているところで、そのような話があった時に、利回りとしては悪くないが、会社さんのクレジット、B/Sどうなのかと、そのような部分も出てくるので、そうしたことも含めいけそうなものがあれば、当然収益性の高い収益案件もやっていくというのは、これまで通りであり、変わっておりません。

Q:物件取得を取り巻く人材というか取得部隊の皆さんについてですが、スポンサー変更以降、取得チームに何かしらの変化があったのか。拡充されているとか縮小しているとか、取得部隊の人材面についてもお聞きしたい。
A:こちらについては、今、強化をしているところです。今年の1月1日に、これまで、産業ファンドのインダストリアル本部、都市ファンドの都市事業本部というところに、夫々投資部を付けておりましたが、1月1日にこれらを統合し、投資本部を新設しました。投資本部では、産業ファンド、都市ファンドだけではなく、新しくスタートした私募も含めて、トータルで色んな案件を検討できるような投資本部という形にしております。元々投資本部にいたメンバー全部を足した以上に、社内外から頭数も含め強化をしているところであり、KKRとの案件の協働での取組み、開発関係の取組み、こういったことも含めた幅広い案件に対応できるように強化しているところです。

Q:今般の公募増資に関してですが、敢えてこのタイミングで増資をした、この3年間でも一番厳しいと思われる局面で増資をした意義と、何が決め手で決断に至ったのかを伺いたい。
A:公募増資のタイミングですが、この件は、今回の公募増資の中で色々と質問があった点です。我々としては、前回の公募増資以降、既存物件でいくつか課題を抱えている中で、この目途がついたら公募増資を進めようとは思っておりました。それが、このタイミングであったということと、今回のエクイティのサイズ感と今回の公募増資の概要、又、その時の株価を総合的に勘案し、このタイミングで、難しいという認識はあったのですが、証券会社も含めて実行しました。結果として、これによりLTVの引下げと、手元のキャッシュも、厚木等も調達できたことで、増えることもあり、今後、まだ不安定な金融環境が続くと思いますが、それでも思い切った取得活動が出来るということで、今回このタイミングで踏み切ったということです。

以上で、質疑応答を終了します。有難うございました。